「映画を凌駕するホイットニーの歌声。」ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY 幻巖堂さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0映画を凌駕するホイットニーの歌声。

2023年1月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

マイケルもエルヴィスもビーチボーイズのウィルスン兄弟も父親に音楽人生を翻弄されたけれど、ホイットニーもまた同様だったのか。何ともやりきれない気持ちにさせられた。また、母シシーはR&Bに理解の深いアトランティックのアリフ・マーディンと数多く仕事をしていたにもかかわらず、なぜに娘をクライヴ・デイヴィスに売り込んだのか。見終えた後も、興味の尽きない作品だ。
彼女の短い人生をダイジェストしただけのような脚本はかなり散漫で、演出・編集もあっさりしておりどこに焦点を当てようとしているのかわからず、残念な出来上がりというほかない。それでもそんなストーリーをはるかに凌駕する彼女の歌声に涙を誘われてしまう。少なくともドラッグにどのようにかかわっていったのかというところだけはもっと深く描いてほしかった。
ナオミ・アッキーの熱演は認めても、最後までホイットニーとは思えなかったし、口パクばかりではなく、「リスペクト」のジェニファー・ハドスンのように直歌を聴かせてほしかった。それにしても、ボビー・ブラウンはまるでチンピラにしか描かれていないし、クライヴ・デイヴィスは善人に描かれ過ぎすぎだろう。
彼女の死後、一人娘のクリスティーナが母を追うようにドラッグ中毒で22歳の短い命を散らしてしまったのはさらに悲しいし実に残念だ。

幻巖堂