「あまりに前半歌唱シーンに依存しすぎて、物語が全然進行しないことに苛立ちを感じました。」ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0あまりに前半歌唱シーンに依存しすぎて、物語が全然進行しないことに苛立ちを感じました。

2023年1月12日
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鑑賞方法:映画館

 最近著名シンガーの伝記的作品が数多く公開されてきて、なかには大ヒットするのものもありました。けれどもホイットニーの人気や知名度をもってしても、本作は興行的に失敗し、半月で公開終了してしまいました。

 予告編でホイットニー役のナオミ・アッキーの歌唱シーン(音源はホイットニー本人のものを使っている)に圧倒されて期待していたのですが、あまりに前半歌唱シーンに依存しすぎて、物語が全然進行しないことに苛立ちを感じました。
 ラスト近くなって、ホイットニーが大麻所持で逮捕されたり、コカイン中毒で療養に追い込まれるなかで苦悩する段になって、やっと彼女の心情が前面に出てくるのです。それまでは、伝記映画にありがちなエピソードの羅列が続いたのです。『ボヘミアン・ラプソディ』と同じ脚本家が書いている点では、やっぱりという感じです。

 それにしてもあのホイットニーが、デンマークで行われた再起コンサートで、音域が狭くなってしまい本来の声が出ていなかったため、大半の観客が途中で帰ってしまったということがあったことには驚きました。相当にショックだったことでしょう。

 結局、48歳での急死したことには触れられず終いとなり、最後は死亡する前年に開催された2011年のグラミー賞前夜祭で、彼女が歌うシーンで締めくくられています。圧巻の3曲メドレーで圧巻でした。これには伏線があって、ずっと前のシーンでは3曲メドレーなんて無理と拒否してきたことだったのです。歌唱力を必要とする彼女の楽曲では、続けて歌い続ける行為は、肉体的にとてもリスクがあったのです。それでもあえて挑戦したことに、復帰にかける彼女の意気込みを感じさせてくれました。

 個人的には、映画『ボディガード』が成立した経緯を、ホイットニーのセリフだけでなく、彼女を主役に指名したケビン・コスナーも登場させて、もっと具体的に描いて欲しかったです。

 とにかく本作で大画面と大音量により、ホイットニーは復活します。映像はナオミ・アッキーの演技に変わっていますが、歌っているのはホイットニー本人なので、ホイットニーのフィルムコンサートとして、堪能できる作品でした。

流山の小地蔵
Numoさんのコメント
2023年1月19日

最終日に観てきました。あまり宣伝していなかったので上映期間があやうく終わるところでした。ラストの3曲メドレーのシーンですが1994年のAMAだと思います(客席で見守る娘がまだ幼い。ボビーも一緒に応援)。歌唱も絶頂期で、家庭を求め続けたホイットニーの幸せだった時が流れている、これはそのシーンの直前ドラッグに手を出し浴槽で亡くなるのがもうわかるので、彼女の最後の脳裏かのように思えました。

Numo