「銭湯はつらいよ」湯道 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
銭湯はつらいよ
まるで、「家族はつらいよ」のような、山田洋次っぽい温かさが、本作にはありました。在り来りで安っぽい予告には嫌気がさし、その上ポスターがあまりにもダサくて期待なんて全くしていなかったのですが、中身はとても優しくて面白い、よく出来た人間ドラマでした。もう、予告には騙されないぞ!
山田洋次のような人情もの、三谷幸喜のような群青劇。寺島進、浅野和之、笹野高史、吉行和子、梶原善、夏木マリという、二監督の常連も出演し、加えて小日向文世や戸田恵子、吉田鋼太郎に角野卓造、柄本明という日本映画界の重鎮勢揃い。これぞ、日本映画!なんだか懐かしいテイストで、じんわり来ました。日本映画の集大成と言っても過言ではありません。こんなにも、邦画界を支えてきた名優が揃う映画は他にないし、これ以上のものは出来ないでしょう。この国に生まれてよかった、とそこまで思える映画でした。
こんなにも沢山の登場人物を上手いこと、余すことなく描けているのには、終幕後、思わず大きな拍手を送りたくなるほど。《湯》の掘り下げも素晴らしいし、これがJapanese cultureだ!と世界に誇りたい物語であった。予告通り、「ほら、涙がぽろ〜り」。お風呂の映画って、そんなに濃ゆく出来ないでしょう、と思っていたのですが、ここまでやってくれるとは。個人的には、笹野高史と吉行和子のエピソードがたまらなく好きです。
メインとなる3人の設定は少し無理があり、もっと過去エピソードが欲しかったなと思ったり。序盤はあまり引き込まれず、遠目(?)で見ていたのだけど、ぐんぐん引き込まれて。少しツッコミどころはありながらも、意外にも結構笑えました。戸田恵子と寺島進があんな会話したら、そりゃ声出るて笑 設定に無理があると言いながらも、生田斗真×橋本環奈×濱田岳という組み合わせは見事で、最後まで安心してみることが出来ました。
なんたって、私がこの映画で1番好きなのは、オチとエンドロール。2つのオチがたまらなく愛おしい。「バビロン」に次ぐ、今年ベストエンド。エンドロールには心が温まり、じんわりと涙が溢れ、最高に気持ち良く劇場を出ることが出来ました。これが、整ったってことですね。よくもここまで、《湯》で楽しませてくれるよなぁ...。
大好きです、この映画。
パッケージも予告も荒いですけど、中身はこれ以上考えられないほど上質で面白いです。入場者特典までも最高。「おくりびと」は見たことないのですが、この小山薫堂という男、凄いです笑 とてもいい〈日本映画〉を見させてもらいました。湯は、私の太陽!騙されたと思って、劇場へ!