「人間観察の凄み」イニシェリン島の精霊 こまめぞうさんの映画レビュー(感想・評価)
人間観察の凄み
元は、というか何事もなければ出てくる人達はほとんどがいい人だ。
警官を除く。
ただ空気を読めるか否か、想像力があるか否かの違い。
イギリスの田舎のちっさい島でありながら日本の能面飾ってる男の家。
そりゃ山羊や羊の話しかしない男と話が合うわけが無い。
それを映画開始わずか数分で悟らせるのだから、もうこの作品の描き方が空恐ろしい。
例えてみれば上手くいってたと思ってた夫婦関係が、実は妻が我慢してたから成り立ってたもので、定年を迎えたら突然離婚を言い渡された夫、のような図式である。
夫=絶交を言い渡された側は何が悪いのかさっぱり分からない。
これが都会であれば他に目が向いて気が紛れるだろうが、何しろ島だ。逃げようがない。自分が拒絶されたってことを常に突きつけられないといけない。これはしんどい。
絶交する側の気持ちも分かる。SNSでもあれば承認欲求も満たされるものを、そんなもん無い時代だ。島を出るには歳をとりすぎた。
状況も人物造形も見事だ。この監督を追いかけていくしかない…完全敗北を認めた(なぜ勝負してるのか笑)。
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