「人間の愚かさ、不可解さを見せつけられました。」イニシェリン島の精霊 ごーるどとまとさんの映画レビュー(感想・評価)
人間の愚かさ、不可解さを見せつけられました。
映画ファンが一年で一番ソワソワするアワードシーズンに本格的に突入しましたね。
第95回アカデミー賞では作品賞・監督賞他主要8部門9ノミネートされた本作。
助演男優賞には二人もノミネートされてしまったので票が割れてしまうのが残念ですが。
さて今作は第90回アカデミー賞を席捲した「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー監督作なので期待と緊張の中鑑賞しました。前半こそブラックコメディの要素もあってくすっと笑えましたが、徐々に全く笑えない展開に。「スリー~」よりさらにダークで難解でした。
1923年のアイルランドの孤島が舞台。パードリックはある日突然親友のコルムに絶交宣言をされます。パードリックも観てる私たちもその理由がわかりません。一応「残りの人生、おまえとのくだらないおしゃべりで無駄に過ごすヒマはない」という理由はあるのですがもちろん納得できません。なんとか関係を修復しようとつきまとう男と頑固に拒絶しどんどん行動がエスカレートする男。
一体何を見せられているのか。
と、思っていると気づきました。遠く離れた本土から聞こえる大砲の音。海の向こうではまさに親兄弟も引き裂くアイルランド内戦が激化しているのです。そう、二人の男の不毛な諍いは内戦のメタファーだったのですね。
それに気づくと見方も変わってきました。
なんてくだらないことで争っているのだ。
その行動に何の意味があるのか。
こんな閉塞した島での生活、私には耐えられません。
妹シボーン同様に島を離れるでしょう。
どうしても気になってしまったのはなぜ兄妹は同じ寝室だったのか。
仲が良いとはいえ、それはありえないのでは?
いろいろな読み方のできる作品です。
主演コリン・ファレルをはじめブレンダン・グリーソンもバリー・コーガンも素晴らしいいです。
グリーソンは「パディントン2」であの囚人シェフを演じていた人ですね!
グリーソンもコーガンも助演男優賞候補ですが、個人的にはコーガンにあげたいかな。