「比喩を名優たちが演じる」イニシェリン島の精霊 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
比喩を名優たちが演じる
表面的なやりとりだけだと、かなり意味不明。
昨日までの親友であった音楽家が、突然お調子者の主人公に絶交・二度と関わるなと宣言して、少しでも口をきけば自傷行為をしてでも抗議の姿勢を見せる。
なんのこっちゃ、とは思うが。
しかし、1922年のアイルランド内戦(および1960年代からの北アイルランド問題・紛争に至るまで)の、一連のアイルランド内の対立する民族や宗教宗派、組織、派閥などのいざこざの比喩と考えたら、全ての行動や発言の意味が一致すると思い至る。
また、タイトルの元になっているのはアイルランドに伝わるケルト神話「バンシー」=人の死を叫び声で予告する妖精の伝説のこと。
本作では怪しい老婆がその役割を担うのだが、予告するのは、前述どおりキャラクター個人単体の死ではないのだろうなと。
暗くて理不尽で、閉塞感に満ちた世界で、予測できない展開と、陰惨な会話劇。
これを最後まで飽きさせず観せてくれたのは、監督の手腕と、名優たちの抜群の演技力のおかげだったと思いました。
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