「主人公や親友の行動が理解できず取り残される」イニシェリン島の精霊 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
主人公や親友の行動が理解できず取り残される
親友が絶交したがっている理由は、案外早く明らかになる。その理由も、決して感情的なものではなく、理にかなっていて納得できる。しかも、親友は、決して主人公を嫌ったり、憎んだりしている訳ではなく、ただ、放っておいてほしいだけなのである。そのことは、親友が、殴られた主人公を助け起こしたり、主人公の代わりに人を殴ったりすることからも明らかである。
ここまでは良い。
理解できないのは、親友が実行する自傷行為で、明らかに常軌を逸しているとしか思えない。とても、「ちょっとした感情のすれ違いがエスカレートした」といったレベルの行いには思えないのである。親友が、精神を病んでいるようでもなく、いたって理性的に見えるのも、かえって不自然で、訳が分からなくなる。
一方の主人公も、そんな親友の本気度を認識しながらも、なぜ、それほど親友に執着し、関わりを持とうとするのかが、よく分からない。確かに、妻も恋人もなく、親友と酒を飲むことしか楽しみがないことは理解できるが、あの状況では、親友の望むとおりに放っておいてやるのが普通の対応だろう。
警官も、神父も、雑貨屋の主人も、誰もが、揃いも揃って性格の悪い島民の中で、唯一まともに思える主人公の妹が決断したように、「島を出ること」こそが、最も正しい選択肢だと思えるのだが、主人公が、なぜ、それほど、島に残ることにこだわるのかも、理解に苦しむ。妹も、友達だった警官の息子も、最愛のロバも、もう島にはいないのにである。
結局、妹以外の誰にも、共感も、同情も、感情移入もできず、観終わった後には、取り残された気持ちだけが残った。
ところで、主人公が崖の上から妹を見送った時、隣に立っていたのは誰だったのだろう?
それから、死を予言されたのは2人の男のはずだったが、もう1人は誰なのだろう?
確かに、崖の上に立っていたのは、精霊の老婆と考えるのが最も自然ですね。
しかし、なぜ、それをはっきりと映さないのかが不思議です。
やはり、アイルランドの伝説とか民間伝承とかを知らないと理解できないのかもしれませんね。
どうもありがとうございました。
わかりにくさ狙ってますね。ですから貴殿のご感想がきわめて正論かと思いました。崖の上は精霊が降りたとみなされる、精霊の擬似お婆さん👵のような❓有料パンフは、【コレは精霊ではない。と言明されてます】アイルランドの伝説みたいです。なんか私もよくわからないですみません。
なるほど、そういうことでしたか!
人間だけでなく、動物も含めた予言だったのですね。
確かに、ロバにも、犬にも、人間の名優たちに劣らない存在感がありました。
どうもありがとうございました。
「島にふたつの死が訪れる」
これはドミニクと、もうひとつはロバのジェニーです。
パンフレットの公式レビューにもそう書いてあったので間違いないかと思います。
自傷行為は本当に不可解でしたね。