「夢なのか現実なのか過去なのか悪夢なのか」バルド、偽りの記録と一握りの真実 Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)
夢なのか現実なのか過去なのか悪夢なのか
主人公シルベリオは監督自身の投影だが、過去と現在と妄想を行ったり来たりするためわかりにくく、決して大衆向けの映画ではない。
だがなぜか観終わってもう一度観たくなる映画だ。
ホドロフスキーの「リアリティのダンス」や、寺山修司の「田園に死す」などの過去の自分を自叙伝風に再構築する話に近いが、比喩的でより難解である。
突如始まる米墨戦争、死んだはずの父親との対話で縮む主人公、母の胎内に戻る赤子、夢なのか現実なのか過去なのか悪夢なのか、最期の最後にきてようやく仕組みがわかる、そんな映画だ。
長年アメリカに住んでいてもいまだに「移民」扱いされる主人公シルベリオの苛立ちは多くの日本人にはわかりづらいだろう。
「在日」と呼ばれ、3代日本に住んで日本語を話していてもいまだに選挙権もない人たちのほうがわかるのかもしれない。
長回しが多用される迫力のあるシーンは、映画館でこそ体験すべきものだっただけに、上映期間が短かったのが難点。
コメントする