TAR ターのレビュー・感想・評価
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成功者は聖人君主では無い、人間的である
この作品にのところどころに
ドキュメンタリーの空気を感じる。
実際、そこに生きる人の感情は
生活をし、上を目指している。
演じてはいるが、生の風景が見える。
主人公のリディア・ターには
強く燃える鎧のような強さと
風に吹き飛ぶほどの繊細さを感じた。
夢を、栄光を掴んだ者には
欲望は無い、と言えば嘘になる。
映画は、その人を描いている。
彼女の選んだ人生の行方は
純粋な音楽への愛を感じた。
ケイト・ブランシェットの指揮は
プロと比べても見劣りしない。
※
作家の人格と作品の価値。
主人公ターが教鞭をとる大学での講義の長回しのシーンが圧巻だった。そしてこのシーンが本作のネックだったと思う。
女性蔑視のバッハを嫌い、その曲まで否定する生徒に対してターはむきになり講義のレベルを超えてしまう。
リディア・ターは自他ともに認める天才マエストロ。彼女はレズビアンを公言し、自分が指揮するオーケストラの女性団員と婚姻関係にある。
そんな彼女が作家の性的嗜好や人格をその作品の評価基準とされることに反発するのは当然だが、若い生徒に対しての彼女の攻撃は少々度が過ぎていた。それは娘のいじめっ子に対する態度も同様に。
作家の人格と作品の価値。作家の人格や言動がその作品を評価するにおいて基準の一つとされるべきであろうか。
特に最近の映画業界ではこの話題で持ちきりだ。監督が演技指導と称して女優に性的暴行、出演俳優が性的暴行あるいは薬物犯罪を犯した等々。それが原因で作品がお蔵入りに。
作品自体に罪があるのかとこういった事件が起きるたびに議論されてきた。当然スポンサーのついてる作品ならば公開は難しくなるだろう、スポンサーはイメージを大事にしたいから。しかし、作品の価値がそれによって下がるだろうか。
極端な話、死刑囚が作った芸術作品が高い評価を得ることだってあるかもしれない。そもそも人間の心の中なんて誰にもわからない。心が汚いから作品も汚いなんて言える人間がいるなら逆にその人の心の中を見せてほしいと思う。
人間の心の中は見えないが作品は見える。結局は目に見えるもので判断するしかない。
劇中でソリストを選ぶオーディションのシーン、演奏者が誰か見えないように壁が立てかけてあった。先入観なしに演奏の良し悪しだけで選ぶためだ。作家の人格で選ぶとしたならたとえ素晴らしい作品でも作家の顔が見えていてはその作品は選ばれないかもしれない。
ちなみに私は今でもロマン・ポランスキーやケビン・スペイシーの作品は好きだ。
天才マエストロのリディア・ターは仕事も私生活も順風満帆のように見えた。しかし頂点に上り詰めた彼女も御多分に漏れず権威におぼれ、自らの欲望を満たすために周りの人間を傷つけていく。自分の意に添わなかったレベッカを貶めて死に追いやったことから彼女は糾弾されその地位を失う。
女性指揮者として逆境の中築きあげた地位が崩れていくのは一瞬だった。彼女が普段感じていた視線、何らかの音に悩まされていたのは彼女の罪悪感からくるものだったのだろうか。
表舞台を追われて落ち着いたフィリピンの地でマッサージ嬢を選ぶ際、思わず嘔吐してしまったのは自分の今までの行いを思い知ったからだろうか。
主人公は女性だが、男性と同じく権威を手にした人間がその地位におぼれて道を踏み外していく様を性差なく描いた点、ジェンダーレス映画としてもよくできた作品だったと思う。
また誰もが羨望の目で見つめる完璧な存在だった主人公が徐々に追い詰められて狂気を帯びていく様はスリラーとしても実に見ごたえがあった。
ちなみにクライマックスでオーケストラに乱入して相手の指揮者を突き飛ばす際の掛け声はやはり「ター!」だったな。これが主人公の名前の由来だと思う。(噓)
ベルリンフィルの常任指揮者の地位を追われてフィリピンの場末のオーケストラを率いる彼女。あれだけの不祥事を起こしたのなら業界から永久追放でもおかしくない。しかし、人格に関係なく彼女の作り出す作品は本物だったからこそ、リスタートの機会を与えられたんだろう。
送られた本の意味や生徒の貧乏ゆすり、ラストのコスプレコンサート等々わからないシーンが多いので、レビュー書き終えたら解説動画見てみよう。
上滑りの映画
2回観てしまった。
1回目、何か惹かれるものがあり、それが何なのかを知りたくてもう一度観た。
2回目、何に惹かれていたのか、それが、クラシック音楽のインテリジェンスに過ぎないことが分かってしまうと、底の浅さばかりが見えてきて、主演女優も魅力に欠ける。
不親切な映画
クラシック音楽に興味がないのに見た私がいけなかったのか?でもこれだけ評価されてるってとはその知識は必ずしも必要じゃないんだよね。でも音楽の話のシーンが多すぎ、きっとストーリーに関わることを言ってるんだろうけど興味なさすぎて全然頭に入ってこない。ケイト・ブランシェットの力の入り過ぎた演技も苦手だし、何しろ長いよなー。150分はもう今後の映画のスタンダードになっちゃうのかな、90分で十分素晴らしい映画つくる監督は山ほどいるけどね。
個人的2023ベストムービー
仕掛け不要、脚本・演技で王道勝負のThe映画。冗長な会話劇に散りばめられたキーを聞き逃さないよう集中を要するので鑑賞後疲れるのが難点。ケイト・ブランシェットは評判通りの名演。時事問題を中心に明らかに情報過多なのに、きっちりメッセージに収斂される見事な作り。
ケイト・ブランシェットすごい
長いし、情緒不安定になるし、普通のホラー映画より怖く感じるわで、あんまり好きなタイプの映画じゃない。
でも凄かった。ケイト・ブランシェットは言うまでもないが、脚本・演出がまた凄まじい。
組織の権力構造、人の嫉妬・嫉み、ジェンダー、差別、介護、SNSの弊害などなど、これほどまでに現代社会が抱える問題がぶち込まれているとは。
正直、1回観ただけじゃ理解が及ばないところが多かったが、解説、ネタバレ等を見て一気に作品の深さと面白さを知った感じ。
本作は賛否両論あるというが、あのラストもかなり分かれるでしょうね。あれに希望を感じるか、それとも絶望か。私は前者。
ちなみに、演技だけで評価するなら、米アカデミー賞の主演女優賞は誰が見たって本作のケイト・ブランシェットでしょ!
難解 そもそも答えを開示するつもりはない映画 明確なきっかけやエピ...
難解
そもそも答えを開示するつもりはない映画
明確なきっかけやエピソード、理解できる行動と帰結が描かれていないので、私には何とも評価することもできない
何じゃこれ!
と叫ぶしかない
指揮者の苦悩
まずは、マーラーの交響曲第5番の演奏風景が扱われているので、ビスコンティの「ベニスに死す」を嫌でも思い浮かばされた。あちらは、美に魅入られた男性作曲家の苦悩だったけれど、こちらも美に魅入られた女性指揮者の苦悩という対比が面白い。「ベニスに死す」では、旅先で偶然知りえた、美しい少年を追いかける物語だったが、こちらは、Tarが男性社会に負けないように、日々、緊張と集中を強いられる中、安らぎを女性性に求めているようにも見えた。ケイト・ブランシェントの指揮を含めた演技も鬼気迫るものがあり、公私で次第に不協和音が重なって追い詰められて、転落してしまうのは、現代ならではか。
劇中、作曲家マーラーが交響曲第5番がきっかけに、人生が大きく変わってしまったのが暗喩に使われているかのよう。とかく、女性同士世界の方が、男性同士よりもやっかみ、嫉妬が多く、感情的な反応が強いだけに、男性優位の指揮者という職業でのむずかしさを描いているようにも見えた。
Tarの転落劇にしても、クリスタという生徒が自殺したこと、授業でバッハを拒否する男子学生への指導、副指揮者の後釜で身びいきの女性を指名しなかったこと、チェリストを団員以外の女性を抜擢したこと、子どものいじめ、仕事部屋から転居を迫られたことなどで、映画で見た感じでは、グレーであり、本人の責任だけではないような違和感が残った。女性が上り詰めることは難しいってことなのか。
欲を言えば、クラッシック音楽が好きで、音響が素晴らしかったので、もっと音楽シーンが聞きたかった。
ノリがよくわからない
伸るか反るかの映画だと思った。
ところどころ生々しい表現は面白かった。文脈を所々、外しているのは狙いだろうけど、ハマるかどうかは微妙なところ。
ラストも解釈は判然としないが、それも狙いなんだろうな。
生きるとは現実と反面してどこか擬態めいた世界にあるということだろうな。
ケイト・ブランシェットの熱演が最大のみどころ だが…
本作はケイト・ブランシェットの独壇場だ。主演女優としての鬼気迫る演技はとにかく大迫力で圧倒された。そして紆余曲折を経て、余韻を残すラストシーンへ。上映時間158分も、さほど長くは感じないほど引き込まれる。
ただし、実話だと思い込んで観ていたので、観終えた後にフィクションだと知り、ちょっと微妙な気分に。全体を通してとても良い作品だとは思うのだが、うーん…そうなると本作の趣旨がよくわからんなぁ的なわだかまりが残ってしまった。
また、ストーリー中に多くの伏線が張られていたと思うが、結構ディテールへのこだわりが強く、正直なところついていけなかった(汗)1度の鑑賞では本作の真髄は見えないのかも知れない。
評価されている作品だが、好みは分かれるだろう。個人的にはやはり星3つが上限かな。
ケイト・ブランシェットは性別を超えた特別な魅力がある。
最初は筋が見えなくてどういう展開になっていくのか予想がつかずに見ていた。
だんだんそういうことか、となり、
冒頭のシーンの意味が結びついていくのが楽しい。
重苦しい展開かと思いきや最後はなかなかユーモラスな着地。
物語みたいに権威を盾に傍若無人に振る舞う人が、
現実でもちゃんと堕ちてくれる世の中ならまだ救いがあるだけど。
ハンサムウーマン
指揮者としての絶頂期から、セクハラパワハラでの転落。どん底から異国での再起。たくましい。
絶頂期のリディアにしたら、考えられないジャンルであろうラストの場面。それでも指揮者としての自分の居場所を見つけたリディア。たくましい。
ケイト・ブランシェットがとにかく素敵。ハンサムウーマンって言葉がピッタリ!
こんなに人の気持ちがわからない人、自分の事もわかってない人が人の心...
こんなに人の気持ちがわからない人、自分の事もわかってない人が人の心を打つ音楽が作れる気がしない。この分野で頂点に上り詰める?人としては情け無い。
彼女の生き方
冒頭から対談~大学の講義頃まで
話して三十分近く時間を要して
見るのをやめるか考えていた
こういうの苦手だな~と思いながら。
やっと動きだしてからも
彼女の話はとまらない
マエストロの映画なので
♪オーケストラの演奏が聞けると
思っていたら練習風景だけ
初めから主役のターの人生
生き方を描いていることがわかった
吹替えで見ているのに
なかなかわかりずらかった
音楽界の頂点を極めた
ターの生き方
ベルリンフィルのマエストロ
昇り調子の時は何をしても
上手く進むけど
いつまでも……続かない
誰かを蹴落とせば
やがては自分に返ってくる
絵に描いたような人生
彼女の人生は輝かし時があったが
充実した時間もあって
何も怖いことはなかった
常に…闘って生きていた
喜びも味わったが
それ以上に苦しみも味わう
主役のケイトブランシェットの
台詞の量は分厚い台本だったと想像します
演技は素晴らしかった。
ラストは
音楽を知らない人たちを
相手に指揮してるってことですか?
わからないところが沢山ある映画でした
繁栄、陥落、再生
頂点を極め、
頂からの陥落。
落ちてもなお再生し、這い上がろうともがく。
その物語の中には、年齢による衰退、若さゆえのエネルギッシュさ、人生そのものの繁栄と衰退まで絵ががれているように思った。
私的鑑賞映画史上No.1:トッド・フィールド監督×ケイト・ブランシェットに脱帽!!
『TAR/ター』は劇場で3回、Blu-rayで1回観ている。
本作は2回以上観る価値がある。
本作はトッド・フィールド監督16年ぶりの新作であり、
アカデミー賞主要6部門にノミネートされながらも無冠に終わっているが、
主人公TARを演じるケイト・ブランシェットの演技はただならぬ迫力があり
彼女自身引退をにおわせたくらい心身を削って演じているのがわかる。
初見ではセリフやストーリーを追うので精一杯で、
正直、映像や音に集中できていなかったと思う。
であるがゆえに、あのシーンはどういう意味だったのか、あの音は?と
疑問が尽きなかった。自分の仮説をもって終わった。
その仮説が正しかったのか、ストーリーを知り、
セリフもだいたいわかった上での2回目の視聴は、
本作を理解する解像度が格段に上がったと思う(回を重ねるごとに気づきが増える)。
本作は主人公TARがかつて指導した若手指揮者が自殺をしたことに端を発し
自殺した両親から告発されてしまうのだが、
どうもTARに対する悪意を持った人物や、TARを利用してのし上がろうと
する人物など、複雑に色んな人の思惑が絡み合っていて、
それがTARを陥れていく物語だ。
TARも権力があるがゆえに、傍若無人な側面もあるが、
ある意味、自分の思いに率直なのだろうと思う。
キャンセル・カルチャーに巻き込まれていくが、
そこで終わらないところがTARの真の強さだとラストでわかる。
ただ、後半のTARの狂いっぷりには圧倒される。
オーケストラでのライブ音源録音シーンはそれが顕著なのだが、
もはや笑えるくらいに気持ちいい狂いっぷり。
そこが魅力でもある。
ラスト近くで、TARの実家で彼女がバーンスタインのビデオテープを観て
涙を流すシーンがあるが、ここで原点回帰したTARの表情が変わるのが
とても印象的だ。険しい表情から悟りの表情に変わるのだ。
そして兄トニーとの会話も心があったかくなった。
(TARはリディア・ターという名前だが、本名はリンダだということもわかる)
ラストは唐突とも思える終わり方だが、
きっとTARの再生の物語であろうと思う。
これは1回目と同じ所見だ。その確認ができた2回目だった。
3回目も4回目も所見は変わらなかった。
本作は説明的なセリフ・字幕は一切ない。
したがい、物語をどう解釈するかは視聴者に委ねられている。
おそらく観終わった人同士が話すと、違う見解や所見が行き交うはずだ。
そこがこの映画の面白さであり、私が沼にハマった所以だと思う。
ちなみにTARのドイツ語でのセリフの字幕もない。英語のみ。
本作を面白いと思うかどうかはその人次第だが、
絶対観て損はないと思う。必ず語れるのは間違いない。
2時間45分なんてあっという間だ。
アーティストの狂気を感じられてよい
予告編では、ケイト・ブランシェット演じるストイックな指揮者が芸術の極北に到達するために正気を失う話かと思っていた。
たしかにそういう映画ではあるのだが、想像していた展開とだいぶ違っていて驚かされた。
リディア・ターという女性指揮者の物語。
彼女はペルー東部の先住民音楽を研究し、彼らと5年間ともに暮らした、という経験もあるが、その後、華々しい経歴を重ねて、ついにはベルリン・フィルの首席指揮者にまでのぼりつめる。
マーラーの5番のライブ録音を控え、リハーサルを重ねる。演奏は順調に仕上がっていく。しかし、ターが過去に指導した若手女性指揮者の自殺をきっかけに、彼女自身の人生が大きく狂わされていく。
映像は洗練されている。コンクリート打ちっぱなしの家や、インテリア雑誌にでてきそうな仕事部屋、もしくは高級ホテルやレストランといったロケーションは、知的で高級なイメージとともに、どこか無機質な空気を醸し出している。これはターという人間をうまく表現している。
彼女は天才的な音楽家だが、エキセントリックで人間性に欠ける部分がある。演奏しているときだけ感情を持った人間になるのだ。
その性格ゆえに破滅していくのだが、なにかが変わるということはない。
本作で繰り返し述べられるのは、「音楽を演奏するときに重要なのは、本質を理解することだ」というフレーズだ。
ターは作曲者がなにを考えてその曲を作ったのか理解しているのかもしれないが、自分の周りにいる人間のことは理解していなかった。そして、これからも理解しないだろう。
性差別についても何度も言及される。女性の権利やLGBTといった問題について声高に語るのだが、それもパフォーマンスだったのかもしれない。
天賦の才能というものは魅力的で、そんなものがあればいいとは思うが、本作のターのようになる可能性もある。
それでも彼女は彼女にしか見えない世界を見ていたのだから、その点については前向きにとらえたい。
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