劇場公開日 2023年5月12日

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「彼女の絶頂と崩壊と」TAR ター talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0彼女の絶頂と崩壊と

2023年12月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

絵が上手に書ける人のほか、楽器ができる人は「人種が違う」と思うことにして自分自身を納得させ、自分のメンタルを守っている評論子ですけれども。
反面、楽器の演奏を聞くのは大好きなのてすが、そんな体たらくの故、クラシック音楽の指揮者・演奏家の世界にはまったく不案内なので、その限りでの(まったくの映画作品としての)評であることを、あらかじめお断りしておきたいと思います。

マエストロ(名門オーケストラの首席指揮者)の世界も、やっぱり「男社会」ということで、女性マエストロ(本来ならばマエストラ?)であるリディアには、何かと生き苦しい世界だったのでしょうか。

冒頭のインタビューシーンから、まずその彼女のその「立ち位置」か感得できるように思いました。

言ってみれば、そういう「ガラス細工」の上にリディアの権威は成り立っていただけに、いったん崩れ始めると、その崩壊の速さは、あっという間だったのだろうとも思います。評論子は。

彼女が、男子学生と意見が合わないことに苛立って、パワハラとも受け取れるようなに辛辣な態度をとったり、プライベートの性的な面(同性愛)では意外と乱雑気味(?)であったりすることが窺われることは、斯界で女性の地位が高くは評価されていないことのストレスの、いわば「はけ口」になもなっていたことでしょう。
そういうストレスのから、いわば内部崩壊を起こしてしまい、楽団を去ることにすらなってしまう―。

「強面」のような外面とは裏腹に、彼女の苦しかった?心情には、同情を禁じ得ないようにも思います。

解説的なセリフも少なく、会話主体の本作は、本物の鑑賞能力(洞察力?共感力?)が要求されますが、佳作の評価には値する一本だったとは思います。評価子は。

<映画のことば>
指揮者は作曲家に奉仕するの。自我もアイデンティティーも昇華させ、聴衆と神の前に立って、自分を消し去る。

(追記)
本作でのケイト・ブランシェットの演技が圧巻だったことは、まったく異論がありません。評論子にも。

(追々記)
評論子が参加している映画サークルの「映画を語る会」でお題作品として取り上げられていた一本でしたけれども。 今は地方暮らしをしている評論子には観る機会がなく、当時は「聴講生」として悔しさを抑えながら、話し合いを聞いていたものでした。
DVD化になり、ようやく観ることのできた作品でした。
鄙(ひな)に住んでいると、映画一本観るのにも苦労がありますけれども。
これも「艱難、汝を玉にす」の試練だと思い、乗り越えることができればと考えています。

talkie
talkieさんのコメント
2024年4月7日

humさん、『月』へのコメントありがとうございました。
本当に、本当に、本当に…ずしりと重たい一本でしたね。
遅くなりましたが拙稿も投稿できました。
ご一読いただけると、幸いです。

talkie
humさんのコメント
2024年4月5日

月への共感をありがとうございました。レビューされてないのでこちらに。
宮沢りえさんの役に入り切った姿に圧倒されたいへん考えさせられる作品でした。近場では公開されて間も無くすると上映されているところがなくなりました。残念にもおもいます。
TARではケイトがさすがのオーラで孤高の役を務めましたが、彼女が実家で思わず感情をあらわにするシーンに人間を感じました。

hum
talkieさんのコメント
2023年12月24日

きりんさん、コメントありがとうございました。
『わたしを離さないで』は鑑賞済でしたが、レビューをなかなかアップできずに苦しんでいました。😢
その節は、また何かコメントがあったら、よろしくお願いします。

talkie
きりんさんのコメント
2023年12月23日

talkieさん
「わたしを離さないで」に共感ありがとうございました😊
レビューなさっていないようなのでこちらにお返事いたします。

重たい映画でしたね・・
僕のあの作品へのレビューですが、あとから気持ちを落ち着けて考えてみた結果の追記は、 ぷにゃぷにゃさんのレビューにコメントとして記してあります。

きりん