「出る杭は打たれる」TAR ター みきさんの映画レビュー(感想・評価)
出る杭は打たれる
クラシックに詳しいわけではないけれど
いくつか楽器を演奏してきた経験があるので
オーケストラの練習シーンや迫力ある演奏シーンには
酔いしれます。むしろもっと聴きたい・見たいとさえ
思いました。ステージの上のあの緊張感を思い出し
懐かしさも感じたので、その辺は物足りません。
ター(ケイトブランシェット)が天才であるが故に
絶対君主的な言動が鼻に付く人も多いみたいですが
女性がそこまでの地位に立つには、
能力があるだけでは無理な世界だと思うので
如何に努力を積み重ねてきたか視点を変えてみると
もっと違った見え方があるのではないかと思います。
.
.
全体的にターの悪評ばかり目に付きますが
ジュリアード音楽院での授業で、
頑なにバッハを認めない
男子学生(音楽的理由ではなく)に、
懇々と辛抱強く指導するシーンは
むしろ学生のためを思っての指導であり、
そこを理解しきれない学生が悪態をついて
退出する時には「お前に指揮者は向かん!!」と思ったし、
おまけに緊張か苛立ちからか終始貧乏ゆすりをする彼に
わたしならブチギレる自信があります🤣(笑)
.
.
副指揮者セバスチャンを更迭も、理にかなっていたし
一方的な更迭ではなく、きちんと対面で会話をし
理由は明言しなかったけれども、とても良心的な配慮が
見て取れた。
※副指揮者なるものが存在するという事を本作で
知りました。
.
.
要するに、彼女の才能に嫉妬し、己の才を過大評価する
何者かたち(複数だと思っています)によって陥れられた。
そんな印象です。
まぁ多少のセクハラはあっただろうし、自分の立場が危ぶまれる相手
クリスタの存在は目の上のたんこぶだったため
各楽団に批判的なメールを送り付けていたのもどうかとは思うが…。
それでもそんなことをするなんて、格式高い業界こそ普通にあるでしょ
(偏見ですw)
.
.
自信と誇りをもっていたベルリンの指揮者としてのプライドから
あの行動に出たのは至極納得する。自分の首を絞めるはめには
なったけれども、それでも彼女は強い。
クラシック界から新しいジャンルの音楽の世界でまたその名を
轟かせるスタートになったと思う。