「人間の欲望は尽きない!」TAR ター Socialjusticeさんの映画レビュー(感想・評価)
人間の欲望は尽きない!
この映画は気持ちのいい内容だったとは言えない。ベルリンフィル(実際はドレスデン交響楽団)の常任指揮者までになったターの人を蹴落としていく、おぞましき悪行とその結果であって、最後はフィリピンで娯楽のオーケストラの指揮をして、人生を再発見しようとしている。悪行といってもこうやって出世していって平気な顔をしている人びとは山ほどいると思う。また、フィリピンに行って、ビデオゲーム?モンスター・ハンターの音楽の指揮を
め、出直しているが、やり直していても似たような失敗を繰り返すような気がした。欲というのは永遠に続くと思わせている。
この映画の出だしはテックスト・チャットからで、何か不穏な雰囲気をすでに漂わせていた。読むことができないなと思っているうちに、ニューヨーカー ・フェスティバルでのアダム・ ゴプニック(Adam Gopnik)本人のター(ケイト・ブランシェット)へのインタビューに入る。そこで、ベルリン・フィルと。ええ!ベルリン・フィルに女のコンサートマスターはいるけど、指揮者はいない。おかしいなあと思いウィッキーで調べたら、本当の話じゃないと。(私はこの女優ケイト・ブランシェットを全く知らなかった)ちょっとがっかりしたが、私はクラシックが好きなので観てみた。
そのうち、ドラマだとわかったが、インタビューの前のアダムの略歴紹介で驚いた。東ペルーのウカヤリ川に住んでいるシピボ・コニボ民族(Shipibo-Conibo)の音楽まで研究していて、世界的に経歴のある女性指揮者でなんでもできる人なんだと感心して見ていた。ターはマーラに親和性があって、ベルルンフルで第五だけを残して全て演奏している。これを指揮すれば、マーラが完結するのだ。それに、第五のアダージオ(Mahler: Symphony No. 5 Fourth Movement (Adagietto))はロバートケネディーの葬儀の時、バーンスタインが指揮をしたと。バーンスタインはターの師匠なのであると。この結末はターにとって口惜しいだろうね。
ターはジュリアードでマスタークラスを持っていて教鞭をとっているがこのシーンは結構複雑で理解に苦しむ。彼女は指揮者の青年に音楽に挑戦させている。青年はバッハのような白人の男のクラッシックに拒否反応を示し彼女はその性別のステレオタイプに反論を示しているようだ。
ターは挑戦的な人で、その後ニューヨークで食事をした時、クリスタ・ テーラーの小説の初版本を受け取るが破り捨てる。自分も『ター オン ター 』という本を出版する予定だから。先を越された?というような、競争心のある、攻撃的な態度に出る。
この映画はターの芸術に対する狂気が丸見えで薄気味悪く、好感が持てなかった。ベルリンフィルを指揮をしている時も、完全主義と言おうか自分の思っている音楽を作れないから、時々は冗談も言ってるが、きみ悪く、ターの敬服しているレナードバーンスタインのような雰囲気は全く持ち合わせていなかった。
ターはベルリンに帰ったが、指揮者を解雇され、シャロンも疑惑だらけのターを信じることができなく、娘から離した。
ターはベルリンフィルが新しい指揮者でマーラーの第5番をライブ録音するところに入り込み、後任の指揮者エリオットに殴りかかる。おぞましい狂った姿のター。
最後の方で、一番好きなシーンだが、ターは故郷に戻り、レナード・バーンスタインが音楽の意味について語るコンサートの古いDVDを涙ながらに見ている。初心、忘れるべからずのいいシーンだ。ターはバーンスタインの言葉に共感して、この道に進んだはずだ。