「もう一度観直したい。。。」TAR ター TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
もう一度観直したい。。。
さてさて、ざっくりと聞いていた前評判から「評するのが難しそうな作品」とは思っていましたが、観終われなやはり「一度観ただけでは消化しきれない」とても複雑な作品です。何せ、いわゆる説明的なシーンやセリフは一切なく、展開を追いつつ前のシーンを思い起こして「何があったのか」を想像していく必要があります。
オープニングからクレジットが流れ、バックグラウンドで流れる音楽(歌)と子供たちの声が眠気を誘うのを我慢しつつ、ようやく始まった冒頭のシーンからスマホのアップにメッセージのやり取りを見せられて、正直、何を意味するのか全く解りません。ただ、これ結構な後半シーンで繋がる状況と、もしかしたらこれは?と匂わせる(とは言え、やはり説明はされない)やり取りを思い起こせば、実は「重要なシーン」なのだと思います。(あぁ、もう一度観直したい。。。)
そして、音楽やオーケストラという世界に全く造詣がないとこれまた何を言ってるのか解らないやり取りを聞いて、これをあと2時間半か、、、とおののきますが、その後徐々に物語が動き出すことで、細かい意味は解らなくてもケイト・ブランシェットの凄みだけは否が応でも感じます。そして、そのケイト演じるリディア・ターに惹き込まれること請け合いです。オケを仕切る指揮者としての彼女も、学生に講義をする彼女も、その説得力と有無を言わせない押しの強さに気圧されますが、徐々に見えてくるそれ以外の部分における彼女の言動の「際どさ」に不安を感じ、リディア自身の不安定さ(不眠)が相まって強い毒性を感じます。
兎も角、この作品の肝は何と言っても「音」にあります。それは迫力十分のオーケストラが奏でる音楽から、リディアの強迫観念を際立てる微かな物音まで様々ですが、さすがにこれは劇場でないと味わいきれないでしょう。
残念ながらアカデミー賞では6部門でノミネートされたものの、結局無冠に終わりましたが、サービスデイとは言え平日の微妙な時間帯のTOHOシネマズ日比谷のスクリーン1はなかなかの客入りでした。結構な集中力を要する難解な作品ですが、見応え十分ですし、個人的に「作品性」としては正直エブエブよりこちらの方が好みだったりします。観終わって感じる「もう一度観直したい」難解さは癖になる面白さで、実に濃厚です。
全く同感です。
見ている間は訳が分からないなという状態なのですが、徐々に推測させられていることに気づき、見終わったあとはこの作品のことばかり考えています。
取り込まれてしまう作品です