「所詮漫画です、目くじら立てずレトロを楽しみましょう」ファンタスティック4 ファースト・ステップ クニオさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 所詮漫画です、目くじら立てずレトロを楽しみましょう

2025年7月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

カワイイ

 子供向け?なんて悩んではいけません、もとよりコミックが原作なんですから当たり前。四人の宇宙船科学者が、宇宙へ行った際のアクシデントで、四人それぞれ異なる特殊能力をDNAレベルで持ってしまった。普段はフツーの人間ですが、ハチャメチャのまさに漫画レベルの能力を発揮。その活躍により全世界からヒーロー扱いされているって前提が手際よく冒頭に示される。

 ペドロ・パスカル扮するリードは「ワンピース」同様のゴム人間、その美しき妻スーはバネッサ・カービーが扮し見えない圧力パワーを発揮、彼女の実の弟であるジョニーはジョセフ・クインが扮し炎を操り高速で空を駆け抜ける、そしてリードの親友であるベンは岩だらけの外見で怪力が売り。さてこの四人で地球を侵略する奴等と戦うお話。嗚呼、馬鹿馬鹿しいったらありゃしない、って言ったらお終いです、そうゆう漫画なんですから。

 もとよりマーベルの作品なんてのは映画芸術とは対極にある、ひたすら金儲けの娯楽作。子供が自らの持ちえない能力で皆に貢献するヒーローになりたい願望を満たすのが目的。米国だった日本だって、ヒーロー願望があふれかえっているでしょ。一時の夢の娯楽をコミックも映画も与えられればそれてよろし。

 それにしても主演に男性ホルモン分泌過剰な人気大スターであるペドロ・パスカルと、英国王室を題材にした「ザ・クラウン」で奔放なマーガレット王女役で一挙に人気を博し以降ボンドも含め、オンナ度超濃厚なバネッサ・カービーの二人をよくぞこんな漫画に起用したもので。この二人ならばエロチックサスペンスとか、典型的な美男美女のラブアフェアーなんぞ猛烈に見たいのに。青いユニフォームなんぞ着ちゃって、手を突き出し必死の血相で漫画を演ずるなんて、よくぞご本人側も受け入れたもので。いや、だからこそ意表突くキャスティングが欲しかったのでしょう、だってこの二人が出演してなければ観てませんもの、私は。

 だから、冒頭の念願叶った妊娠発覚シーンが、当然のようにごく自然に展開される作劇なんですね。そして特殊能力同士の夫婦の子供となれば、いったいどんな能力があるのかしら? が本作のベクトルなんですね。宇宙神ギャラクタスなんて遠い昔の大映映画「大魔神」そのまんまの緩急とした動きの悪役のターゲットもこの子供なわけ。となると親であるリードとスーの家族愛が要となり、そう言った展開になるわけで、この辺りは脚本の勝利でしょう。

 そんなちょっと懐かしい感覚を呼び起こすのが、皆さん言われるレトロフューチャーの舞台なんですね。まさに今日より明日はきっと良くなる、次々の新展開の夢を味わう事の出来る1960年代の設定がいいのです。当時の想像するコンピュータやロボット、そして空飛ぶ車などがスクリーン狭しと隅々までデザインされているのが素晴らしい。MetLifeではなくPANAM なんですよあのニューヨークのビルは。そう言えば、本作のキーカラーは当然に青で、パンナムのロゴも青でしたよね。テレビ出演時のレトロなコーラスも当時のまんまなんですよ。上映前のIMAXロゴまでも4専用に作られて、世界観は完璧です。

 こんな調子で、漫画の世界を徹底して真面目に描き、ワクワク感が終始止まらないのが本作の良さなんです。もちろん監督のマット・シャックマンなんてまるで知りませんし、中盤の中だるみも仕方ないかも知れません。この温かな雰囲気を続けて頂くことを願うばかり。と言っても、マーベルですから、他のキャラとのミックスで金儲けに走るのは目に見えてますがね。本年春の「サンダーボルツ*」の汚らしい面々とは混ぜないで下さいね。

 ちなみに20年前の20世紀フォックス版では、ヨアン・グリフィズに元恋人設定でジェシカ・アルバ、弟・ジョニーがクリス・エヴァンス、親友のベンにマイケル・チクリスでした。今回のジョニー役のジョセフ・クインは「クワイエット・プレイス DAY 1」2024年で登場し、「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」2024年に気弱なローマの王を繊細に演じ、いよいよ撮影の入ったビートルズの映画ではジョージ・ハリスン役に大出世の期待株ですね。

クニオ