「60年代の雰囲気が、彼らの活躍を盛り立てる」ファンタスティック4 ファースト・ステップ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
60年代の雰囲気が、彼らの活躍を盛り立てる
並行宇宙にある別の地球が舞台になっていて、1960年代の人々が思い描いた未来のイメージが具現化されたような、レトロフューチャーな世界観が面白い。
MCUのお家芸とも言える「マルチバース」だが、「この手があったか!」と膝を叩きたくなったし、今回は、一つの宇宙だけで完結しているので、落ち着いて物語を楽しむことができた。
MCUとしてのリブート版だが、最初から話をやり直すのではなく、チーム結成4周年の記念番組で、それまでの経緯をダイジェストで説明しているので、「スーの妊娠」という新機軸を、モタモタせずに打ち出せたのも良かったと思う。
やがて、強大な敵を前にして、「家族を守るのか、全人類を守るのか」という究極の二者択一が、チームに重くのしかかるのだが、結局、「どちらも守る」と宣言するスーの演説には、「それができれば、最初から苦労しないのでは?」と、何だか拍子抜けしてしまった。しかも、この地球には軍事力というものが見当たらず、敵にミサイルの一発も撃ち込もうとしないので、「共に戦おう」というスーの呼び掛けが、なおさら空虚に感じられるのである。
その敵にしても、ギャラクタスが、リードとスーの子供を自分の後継者にしようとしていることは分かるのだが、そもそも、何のために惑星を食い尽くそうとしているのか、その目的が不明だし、ラスボスのはずなのに、ただ図体がデカいだけで、惑星を食う母艦以外に、これといった能力がないところには、物足りなさを感じざるを得ない。
ギャラクタスがニューヨークに上陸し、街を蹂躙するシーンは、怪獣映画のような見せ場になっているものの、シルバーサーファーが世界中の物質転移装置を破壊したのに、ギャラクタスがニューヨークの装置を破壊しなかったのは、間が抜けているとしか思えないし、インビジブル・ウーマンの「母性の力」とシルバーサーファーの怒りの前にあっさりと消え去るところは、見かけ倒しとしか言いようがない。
ただ、作品に漂う60年代の雰囲気のおかげで、そうした「お粗末」なところも、楽しみながら観ることができたので、原作の漫画やアニメのテイストを活かした時代設定は、成功だったと言えるだろう。