「新たな世界を守る象徴の盾(キャプテン・アメリカ)となれ」キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
新たな世界を守る象徴の盾(キャプテン・アメリカ)となれ
キャプテン・アメリカ、再始動!
…アレ? スティーヴじゃない…?
『アベンジャーズ/エンドゲーム』のラストで何となく分かるとしても、MCU配信ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』を見ていなければ詳細は分からなかっただろう。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』のラストでスティーヴから象徴の“盾”を託された“ファルコン”ことサムだったが、その重荷から一度は辞退し、盾も手離した。が、ある戦いを経て、盾を受け継ぎ、新たな“キャプテン・アメリカ”になる事を決意。…というのが『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』の(超)大まかな概要。
サムは2代目と思われているが、厳密には“3代目”である。訳あり2代目についても『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』を見て頂きたいが、今回は関わりはないので見てなくても支障ナシ。尚、“2代目”のジョン・ウォーカーは5月公開のMCU次回作『サンダーボルツ*』に再登場。
紆余曲折あって、正式に盾を受け継いだサム。新たなキャプテン・アメリカの物語は…?
何だか久々にMCU作品を見たなぁ…という感じ。
昨年は『デッドプール&ウルヴァリン』があったが、あちらはMCU世界に殴り込みの“デップー映画”だったし。
これまでと地続きのMCU作品としては『マーベルズ』以来かも。
MCU初の興行コケ『マーベルズ』は確かにちとビミョーだったが、今回は本来のMCUらしさを取り戻したようなヒーロー活劇。新しくなっても、キャップはキャップだ。
“THE MCU”であり、“アベンジャーズ新章”であり、“ファルコン&ウィンター・ソルジャー その後”であり、“インクレディブル・ハルク その後”でもあった…?
新たなキャプテン・アメリカとして活躍するサム。
その実力のほどを見せる開幕アクション。盾と翼を駆使しての戦い方は、“ファルコン×キャプテン・アメリカ”のサムならでは。
バックアップも万全。こちらも『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』から続投のホアキン。ハイテクを駆使してサポートしていた彼も“現場”へ。しかも、“2代目ファルコン”に…!
サムがキャプテン・アメリカとなりファルコンのポストが空いたからだが、キャップが新しくなればファルコンも。ヒーローたちも続々代替わり。
まだまだ新米だが、サムと協力し合って、任務遂行。
そんなサムたちが大統領から招待を受ける。
招待されたのは、サムとホアキンともう一人。イザイアという老人。
彼も『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』を見ていなければ分からなかっただろう。
“超人化計画”はスティーヴや“ウィンター・ソルジャー”ことバッキーだけではなく、その前にもいた。それが、イザイア。朝鮮戦争で活躍。しかし、アメリカ政府にその超人パワーを研究&実験台にされた後、逃走。ひっそりと隠匿生活を送っていた時に『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』の事件でサムと出会い…。
アメリカ政府によって歴史から抹消された人物であり、本来ならば彼が“初代キャプテン・アメリカ”だった。故にアメリカ政府への遺恨は深い…。
遺恨があるのはサムとて同じ。招待した現大統領と。
サディアス・ロス。
『インクレディブル・ハルク』ではハルク/ブルースを追い、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』ではアベンジャーズと対立。ヒーロー批判の姿勢を貫いてきた因縁のある彼が将軍から大統領に。
サムもソコヴィア協定違反で彼によって一時期投獄された。
サムやヒーローたちにとっては一大事…かと思いきや、ロスからの提案は意外なものだった。
アベンジャーズの再結成。
ソコヴィア協定でアベンジャーズを内部分裂させた張本人が何故…?
サノスとの闘い。世界は常に脅威に晒されている。世界を守るには超人的ヒーローが必要。
あのロスがこんな事言うなんて…。サムはまだ疑心だが、ロスも変わろうとしていた。
さらに、インド洋に突如現れた超巨大物体。そういや、ずっと放ったらかしたままだった。『エターナルズ』のラストに登場したアレ!
その物体からヴィブラニウムを超える新物質“アダマンチウム”を発見し、今ロスは各国の首脳と協議の場に。日本はその急先鋒。
ホワイトハウスで行われる各国の首脳を招いたアダマンチウムを巡る国際会議で、事件は起きた…。
突如、イザイアがロスを襲撃。各国の首脳も命の危機に。
イザイアは逃走した後捕らえられるが、その時の事を何も覚えていないという…。
何かある。そう直感したサムはイザイアの無実と事件を調べようとするが、ロスは一切手を引けと勧告。再び対立深まる…。
が、そう易々と引き下がるキャプテン・アメリカじゃない。サムはホアキンや当初はソリが合わなかった大統領補佐官ルース(小柄で華奢だが、なんと元ウィドウ…!)と共に、事件の真相と黒幕が糸引く陰謀に迫っていく…。
『キャプテン・アメリカ』シリーズはヒーロー活劇であると同時に、『~ウィンター・ソルジャー』も『シビル・ウォー~』もポリティカル・サスペンスの要素が他のMCUヒーローとは違う魅力と面白味であった。
それは今回も。事件の裏にある陰謀。
イザイアはやはり“マインド・コントロール”されていた。あの“光”は…?
マインド・コントロールはイザイアのみならず。多くの米軍人も。彼らは“歌”で。
仕掛けたのは何者…? 目的は…?
地図には無い極秘施設。そこでの研究内容。
ロスと密かにコンタクトを取る人物。
その人物とは…?
キャラの経緯や相関図、背景は他のMCU作品を見てないと分からないかもだが、話自体は陰謀サスペンスであり、同じく他のMCU作品を見てないと分からない『マーベルズ』よりかはずっと見易く、面白味や醍醐味ある。
アクションも充実。
アダマンチウムを巡って日本と友好関係が亀裂。インド洋にて一触即発の危機。サムとホアキンが制止に入る。
日米戦闘機の間を飛び交う空中戦法。
飛行能力を活かしたスカイ・アクションはサムだからこそ。
ホアキンが負傷してしまうが、日米間の危機を食い止める。
スペクタクルと最大の危機は去ったかに思えたが、黒幕の真の狙いは別にあった…。
ホワイトハウス敷地内にてこれらの件について会見中のロスに異変が…。
体調が思わしくないロス。度々身体が悶え苦しみ、薬も服用していた。
その薬こそが“引き金”。
ロスの身体は変貌。赤い巨体に。
かつてハルクを追っていたが、自分が追っていた存在に。
赤いハルク=“レッドハルク”!
これが黒幕の狙い。世界戦争ではなく、ロスの失墜。
裏で全て企んでいたのは、サミュエル。『インクレディブル・ハルク』に登場した科学者。
ブルースはガンマ線を浴び超人(ハルク)化したが、サミュエルは醜い容貌になるも脳が異常発達。
その頭脳をロスが自身の病気治療や超人研究に利用。相互関係を秘密裏に築いていたが、長い収監やロスの裏切りに復讐。
にしても、17年も経って『インクレディブル・ハルク』絡みを捩じ込んでくるとは…!
実現しなかった『インクレディブル・ハルク2』でもある。
ティム・ブレイク・ネルソンが再演。
また嬉しいサプライズで、リヴ・タイラーもラストに登場。
“父”と久し振りの対面。ウィリアム・ハートは残念ながら亡くなってしまったが、まさかハリソン・フォードが引き継いでくれるとは…!
代役で一応ヴィラン。あのレジェンド大スターの心意気に敬服。にしてもハリソンが大統領だとついついあの役を思い出しちゃう…。
MCU作品で初めてと言っていいくらい日本が少なからず関わる。『アベンジャーズ/エンドゲーム』の時は酷かったからね…。『SHOGUN/将軍』大フィーバーの今なら真田サンをあんな扱いしないだろう。
平岳大がアメリカ(ハリソン・フォード)とも堂々と渡り合う首相。こんな男前でリーダーシップある首相おらんやろ! 現実の◯◯総理への揶揄…?
揶揄と言えば、ロス大統領も。新大統領が超人化して暴走。これは現実の新大統領が独裁者化して暴走を揶揄しているに違いない。
ホワイトハウスみたいな首相官邸や理想的過ぎる首相など相変わらずのツッコミ日本描写だが、桜は美しい。
クライマックスの桜の通りでのキャプテン・アメリカvsレッドハルク。激しい闘いで桜は散るも、舞い散る桜の花は不思議な美しさがあった。
また、ロスの憤りの鎮めやベティとの思い出に桜が引用されていたのも日本人としては何だか嬉しかった。
後一ヶ月遅れで、桜本番の季節の公開でも良かったかも…?
無難に面白かった。
が、MCU全体や『キャプテン・アメリカ』シリーズとしても群を抜く作品ではなかった。
『~ウィンター・ソルジャー』や特に『シビル・ウォー~』はMCU作品でもベスト級。『~ザ・ファースト・アベンジャー』とはスティーヴかサムかで好みが分かれるだろう。
やっぱりキャプテン・アメリカはスティーヴじゃなきゃ…。
そんな事、いちいち言われなくてもサムが一番分かっている。だから最初辞退したのだ。
偉大なキャプテン・アメリカの存在。そして最高だった相棒であり、友。
俺は彼になれるのだろうか…?
スティーヴにならなくていい。お前はお前自身。だからスティーヴはお前を選んだ。
そうアドバイスするある人物の嬉しいサプライズ出演!(再びメインで登場する『サンダーボルツ*』、期待してまっせ!)
超人化したロス=レッドハルクに、盾やスーツがあるとは言え、超人じゃない生身の人間のサムが挑む。
スティーヴは希望の的だった。お前は憧れの的になれ。
葛藤と再び闘いを経て、決意を固く胸に。
新たなキャプテン・アメリカ=MCU作品を背負って立ったアンソニー・マッキーの佇まいも頼もしい。
そう。彼のような“盾”が必要。
ED後のサミュエルの意味深な言葉。
まだまだ未知なるヒーローや脅威は存在する…。
MCU新たな幕開け、作品、世界、闘い…。
それらから守る象徴の“盾”となれ。キャプテン・アメリカ!