「うまく混ざっていない」キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド だむさんの映画レビュー(感想・評価)
うまく混ざっていない
漏れ伝わって来る情報から何度も撮り直しをしていたらしく、迷走をしているとは知っていたが、観客としてはそんな事どうでもいい。面白い映画を創って観せてほしいだけだ。
一言で言えばうまく混ざっていない。新キャップの苦悩と敵役レッドハルクの苦悩が上手くつながってこない。新キャプテンアメリカとしてどのように振る舞えばいいのか苦悩する主人公、という話が主軸に思えるのだが、その味が薄くずーっと引き延ばされているだけ。
敵役ロス大統領(レッドハルク)も、最終的に念願だった娘との和解を経て解決したような雰囲気を出してはいるけど、怒りっぽいとか独善的な性格は治ってないんじゃないか・・・? まあ、ハルクはストレスと怒りがパワーの源だから、それが根本的に治ったら意味がなくなるのか?
アクション映画で主人公と同じくらい重要なのは敵役だと思っている。敵が強ければ強いほど魅力的であればあるほどそれを打倒した時の爽快感が上がるからだ。けれど、今作の敵役ロス大統領はどう入れ込めばいいのかわからない。父親としての苦悩・自分が生きるために秘密裏に悪事に手を染めていた・大統領としての責務、という要素が混ぜっていない。個々に固まった要素を「レッドハルク」というガワで包んでいるような印象なのだが、それが全く魅力的に思えない。ほぼ癇癪を起した爺さんなので、それを倒しても(結末としては「説得した」に近いが)、爽快感が無い。中盤のミサイルとダラダラ戦うシーン何て論外だ。
完全に邪推だが、ラストバトルで主人公とハルクが気絶した後、起き上がって言葉での決着をするシーン、背景にすごく「合成映像感」があり、ここは追加撮影したんだろうな、と思ってしまった。(人物と背景のライティングがおかしい、さっきまでいた仲間が急に消える、とか)
全体的な話の流れに「シンプルなアクション映画」に近い印象はある。けれど、それは「ウィンターソルジャー」というとんでもない名作があって、それを超えないといけないのが今のマーベル映画だと思う。
もし、新生キャプテンアメリカが「英雄の二代目としての苦悩と成長」という路線で成長曲線を描けるなら、第一作であるこの作品は「悪くない」という評価に収まる知れないが、これ単体ではキツい。ただ、新しい相棒とかウイドゥが出てくるとかキャラクターを再配置している印象はある。この路線を中途半端にせず、新アベンジャーズを立て直して欲しい、とファンとしては思った。