「【貧しくとも夢を持ち続ながらキチンと働く事、そして夢を叶えるために勇気を持って行動する事の大切さを描いた作品。主人公を助ける心優しき人々の姿も印象的な、多幸感溢れるハートウォーミングムービーである。】」ミセス・ハリス、パリへ行く NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【貧しくとも夢を持ち続ながらキチンと働く事、そして夢を叶えるために勇気を持って行動する事の大切さを描いた作品。主人公を助ける心優しき人々の姿も印象的な、多幸感溢れるハートウォーミングムービーである。】
■1950年代、ミセス・ハリス(レスリー・マンヴィル)は、英国ロンドンに住む、心優しき働き者の家政婦。夫の戦死の報を受け、傷心の日々を送る中、働き先で見つけたクリスチャン・ディオールのオートクチュールのドレスに心奪われ、苦労して貯めた現金を手に、パリへ旅立つ。
◆感想
・ミセス・ハリスの人柄だろうが、彼女の周りには善人しかいない。ドッグレースで大負けした時も、店主の粋な計らいで、お金が戻って来るし、パリに渡ってからも、あっと言う間に浮浪者たちと仲良くなり、果ては、クリスチャン・ディオールで働く人たちの心も掴んでいく過程が、テンポよく描かれている。
・今作の魅力の一つは、クリスチャン・ディオールのオートクチュールのドレスの数々が観れる事である。
「オートクチュール」や「ファントム・スレッド」を思い出す、ディオール本社での、ファッションショーや、お針子たちが働く部屋の内装も、魅力的である。
・威圧的な、ディオール本社の支配人(イザペル・ユペール:威圧的な人を演じさせたら、No1)も、徐々に、ミセス・ハリスの魅力に惹かれて彼女の願ったオートクチュールのドレス製作を引き受けるし、モデルのナターシャは彼女に好意的だし、彼女に惹かれている会計士アンドレも、彼女に対しオートクチュールのドレスが出来るまで、部屋を提供してあげる。
・更に、バラを贈る事が好きな、粋なシャカーニュ伯爵とミセス・ハリスが巴里の各所をデートしたり、ナイトクラブへ行ったり・・。
ー ミセス・ハリスが、少し色っぽくなっていくのも良い。シャカーニュ伯爵との恋に落ちるのかと思ったが・・。-
・クリスチャン・ディオールが経営危機になった時に、首を言い渡された従業員たちを引き連れて、ディオールの元に乗り込むシーンも良い。そして、アンドレの咄嗟の提案により、馘首を免れたディオールの店員たち。
ー クリスチャン・ディオールの店員たちが、この時の恩を忘れてはいなかった事が、後半に分かる構成も良い。-
■念願の、クリスチャン・ディオールのオートクチュールのドレスを手に入れ、イギリスに戻ったミセス・ハリス。人の好い彼女は、女優志望のちょっとダラシナイ女性に、ドレスを貸すが不注意に酔ってドレスが燃えてしまう。
涙ながらに、夢にまで見たドレスを川に捨てるミセス・ハリス。
だが、クリスチャン・ディオールの店員たちは、その事実を新聞で知り、ミセス・ハリスに新しいドレスを、恩返しの意味も込めて贈るのである。勿論、シャカーニュ伯爵の花束と共に・・。
そして、彼女はそのドレスを着て、パーティでずっと自分を支えてくれて来た男性、アーチーと楽しそうに踊るのである。
<今作が良いのは、ミセス・ハリスがキチンと働いたお金で、高いクリスチャン・ディオールのオートクチュールのドレスを買いに、パリまで出かける彼女の行動力と勇気である。
パリに行って、ドンドン綺麗になって行くミセス・ハリスと、彼女から影響を受けて、人生の一歩を踏みだす人々の姿が、心に響くのである。
今作は、夫を戦禍で亡くした女性が、夢を持ち人々の善意に支えられ、夢を叶える、多幸感溢れるハートウォーミングムービーなのである。
粋な映画とは、今作のような作品を指すのだろうなあと思ったよ。
佳き、映画でありました。>