劇場公開日 2022年11月18日

「ただ、生きるために。」ザリガニの鳴くところ ちゃっちまるまるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ただ、生きるために。

2022年12月16日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

小説未読、前情報は予告のみ。
昨今流行りの「驚愕のラスト!!」と意外な結末を売りにした予告が印象的で、どんなサスペンスドラマなのかと楽しみに鑑賞。「グリーンナイト」後のハシゴ鑑賞だったからなのか、話が染み入る染み入る…笑

個人が感じる映画の善し悪しは、好きな監督や俳優、世界観などで多少なりとも甘くなりがちだと思っている。また、いかにその映画に共感し、自己投影、陶酔、感情移入できたかは、かなり大きな作用になると思う。

この作品は特に、いわゆる「女性的」な感覚が強く、男性よりも女性の方が好む映画ではなかろうか…。
(2つの性別でお話することを不快な方がおられましたら申し訳ありません)

動植物に強い愛情を持ち、救われる日々。一方、属する人間界の理不尽さに怯え、静かに耐え忍ぶ日々。ただ、生きる為に必要な事を選択し、多くを望まずささやかな日々。貧困、家庭不和、嫉妬や疑念に身を焦がしながらも、それでもいつかは…と甘い幸せを願う日々。図らずしも強くなり、前を向き、手に入れたはずの幸せは束の間…消えてゆく。

私はこの映画の冒頭から最後まで涙が止まらず大号泣、翌朝まで目の腫れは引かなかった。 自分と重なる自然界への強い愛情と敬意。そして生育期のバックグラウンドによる苦悩、情熱、そして失望。
「共感」してしまったからだ。
しかしこれはあくまでも「私」だから。
他の誰でもがそう感じるとは全く思わない。

作中何度も出てくる鳥の羽が意味する愛のメッセージも、チーム繊細さんには「なんて素敵なの!!」と胸きゅんでも、動植物に興味の無い方には全く別の印象だろう。また、主人公の「唯一の救い」である自然界への執着に関しても共感が出来ず、「いやさっさと街に越せよ」などと、本末転倒、入り込めないかも知れない。

サスペンスの仕上がりとしては、普通かなと思います。極上サスペンスとか、この結末がスゴイという程でもないかなと思います。ただ、ある意味怖さはあります。感じる方は。

勿論原作は映画に盛り込めてない部分もしっかりと描かれていると思うので別のお話。あくまでも映画「ザリガニの鳴くところ」の印象。

自然界は善悪の概念で生きていない。
生に対して貪欲なものだけが生き延びられる。
ただ、生きるために、生き続ける。

私はこの作品、好きです。

ちゃっちまるまる