「主演と弁護士役の演技が良かった」ザリガニの鳴くところ 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
主演と弁護士役の演技が良かった
主に1960年代のアメリカの田舎で起こった出来事にまつわるミステリーでした。ミステリーの主題としては、湿地帯で発見された若い男・チェイスの死の原因が、カイアによる殺人だったのか、はたまた事故だったのか、ということでしたが、物語の土台にあるのは広大な湿地帯で自然と一体化して暮らす主人公・カイアの生活であり心情であって、むしろこちらの方が見どころといえる作品でした。
謎解きの部分はさておき、湿地帯の中の一軒家で一人で暮らすカイアの生活ぶりは、驚くべきものでした。一人でムール貝などを取って店に売り、それで食料はじめ生活必需品を得るという設定でしたが、半世紀以上前のこととはいえ、当時本当にこういう生活をしていた人がアメリカにいたのか、そのあたりはちょっと疑問という気もしました。
また、殺人だったのか事故だったのかという謎解きの部分に関しても、若干強引な感じがしないでもありませんでした。しかし事件発生の直前にカイアが出版社の担当者たちとの会食の最中に口にした「自然に善悪はない」という一言が、結局はこの事件の全容を物語っていたように思います。これはカイアが大自然から学んだ生き方そのものであり、これがテーマだったんだと了解すれば、まあ面白い話だったなと感じられるのではないかと思います。
ただ物語終盤の見どころとなる法廷でのやり取りとしては、事件の解明がされていない以上、何故検察はカイアを控訴しなかったのかなどの疑問が残らない訳ではありません。無罪判決後の日々をダイジェストで綴っているのだから、世間的にチェイスの死がどういう顛末として処理されたのかを説明してくれてもよかったのではないかと感じたところです。
以上、粗探しをすればいろいろと出てくる作品でしたがカイア役のデイジー・エドガー=ジョーンズや、弁護士役のデヴィッド・ストラザーンの演技が良かったので、評価は★3とします。