「舞台の厳しい美しさに、物語が太刀打ちできていなかった…」ザリガニの鳴くところ ranitaさんの映画レビュー(感想・評価)
舞台の厳しい美しさに、物語が太刀打ちできていなかった…
原作既読した者としての感想です。
舞台に選ばれた湿地の美しさ、自然の豊かさは素晴らしく、冒頭のシーンからはかなり期待したが、鑑賞後の感想としては、残念な点が多かったというのが率直な感想。
いちばん残念だったのは、カイアの子供時代、特に家族の関係性や彼女がいかにひとりで息抜いたのかを十分描けていないこと。そこが無いと、カイアと湿地の深い関わりや、彼女が自然を心から愛し理解する人間に育った理由が説得力を持たないと思う。粗暴な父と、不器用に歩み寄りながら微かな絆を繋いだ短い日々も、さらっと流されてしまい、カイアの孤独や心の傷が描けていなかったように感じた。
その割には、ふたりの男性との恋愛を描くのに時間を割き過ぎじゃないかな…。結果、家族に捨てられたかわいそうな少女のラブロマンスとミステリ、みたいなまとめ方になっていたような。
まあ、原作が好きだと、映画化作品にはかなりの確率でがっかりするものではありますが。もう少し違う切り口で映画化してほしかったなと。
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