「空気感が好き・・・まだまだカスミの人生はここから・・・」そばかす 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
空気感が好き・・・まだまだカスミの人生はここから・・・
蘇畑佳純を理解することは、難しかったです・・・。
他人に対して恋愛感情を抱かない女性・・・として
カスミ(三浦透子)は描かれています。
その理由を、男性(女性)に性的な興味を感じたことがない。
と、本人は言っています。
でも・・・
私には競争社会から降りた人・・・そう見えてしまうのですね。
《カスミはチェリストになる夢を諦めた》
その挫折を引きずっている人。
そこからの人生が描かれていて、チェリストを諦めた理由は、
「なんか自信、なくしちゃった・・・」と呟く。
ラストで、友達の真帆の結婚式でスピーチ代わりに、
チェロを演奏をします。
(ヘンデルのオンブラ・マイ・フー・・・独唱されることが多い曲です)
そして喝采を受けて、これがチェロとの訣別になる・・・
と、カスミの言及がある。
ここでも私は戸惑いました。
なぜチェロと決別することを、成長や区切りのように描くのか?
つまりそれは、
チェロがカスミにとって重い大事なものだったから。
☆☆☆
ファーストシーンを観てみました。
☆☆
なんと、砂浜に座るカスミの頭の中に、チェロの不規則なメロディの断片
・・・ノイズのようにチェロが鳴っている・・・
監督の玉田真也さんは、
《音楽専門学校に行くつもりだったが叶わずフリーターをしていた》
と、経歴にそうあります。
玉田監督は脚本を書いていませんが、
《音楽を諦めた人》で、
(フリーターをしていたが、大学生が楽しそうだったので、勉強して、
(慶應大学に入学して卒業したとあります)
カスミはチェロの弦が切れても放っておくほどの、
トラウマ体験をしているのかも知れない。
音大は競争社会で能力の優劣を、否が応でも意識せざるを得ない大学です。
(私は音大出身で才能の有る無しを嫌と言うほど思い知らされたものです)
音大生の持つチェロって、200万円から500万円くらいするのでは?
入学までのレッスン料に学費その他・・・。
親はそのことは責めないで、結婚、結婚とカスミを責める。
(やはり解せません)
チェリストになりたかったなら、
ソリストを目指していたのでしょう。
そして挫折した。
競争から下りて傷を癒しつつ、
静かに生きる道を選んだ。
かなり以前から教育現場が変化しています。
1、小学校では50メートル走の順位をつけない。
2、親の職業を聞かない、
3、生徒の住所も明かさない、
4、教師は家庭訪問を辞めた、
5、子供たちは互いに下の名前で呼び合う、
(かなり大きくなるまで、お互いの姓を知らない)
差別をしない、
競争をしない、優劣をつけない、
その教育の陰で、
実は熾烈な虐めが行われていたり、
不登校が増え続ける。
コールセンター勤務から幼稚園教諭に転職しただけでも、
生身の人間と向き合う仕事。
カスミが変化したように思える。
そして世永真帆(前田敦子)と共に、
新解釈「シンデレラ」の紙芝居を作るものの、
勇気がなくて途中でやめてしまう。
この映画は、
生き方の多様性を描いたようでいて、
自らの意志で競争から下りて、迷いながら
生き方を探し求める若者の姿を
描いているように見える。
ラストに登場する同僚役の北村匠海。
考えの似てる彼が、ソバタ・カスミの人生の起爆剤になるのかも知れない。
ソバカスの試行錯誤は、
まだまだ続く。
40代のカスミ、
50代、60代のカスミを見てみたい。
そう感じる映画だった。
何かすると、ハラスメントとか直ぐに言われてしまう風潮になり私も戸惑いを感じながら生きている、カスミ自身、生きづらい世の中になった映画を観ている方に感じさせる描き方だったと捉えています。レビューは人それぞれですが。
こんにちは。かすみがチェロをやめたのとうつ病を患ってたお父さんが思い切って仕事を辞めたことがリンクしてるように感じたので、共に新たな一歩を踏み出すきっかけとして描かれたのだと個人的には解釈しました。
私が本作のメッセージとして感じたのはレビューに書いた通り、いわゆる「常識」と言われるものに対するアンチテーゼです。
かすみがあの年齢になっても恋愛感情がないというちょっと極端なキャラクター設定もあえて観客にそれはおかしいよと思わせるために作り手側がしたのかもしれませんね。そういう人もいるんだよと。自分達の常識を押し付けないでという感じで。
競争社会についても今の新自由主義の下での勝ち組負け組みたいな感じで自分の価値を決められたくない。競争に加わるか加わらないかも自分で決めたい。
自分の人生は「常識」に縛られず自由に生きましょう、みたいなことをメッセージとして感じ取りました。でもこれはあくまでも私の個人的感想で、作品から何を感じ取るかは観た人次第で、どれが正解とかないですけどね。
いつもコメントいただいて感謝してます。これからもよろしくお願いします。私も時々自分で何書いてるかわかんないレビューがあったりしますので、遠慮なく突っ込んでください(笑)。