「微妙」渇きと偽り SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
微妙
ちょっと微妙だった。
舞台はオーストラリア。主人公の青春時代のシーンと現在のベテラン警官のシーンが交互に出てくる凝った構成。昔のシーンは水と自然が豊かで、今は干ばつでどこもかしこもカラカラになってる。
面白くなりそうな要素がたくさんあるのだけど、いずれも未消化のまま終わってしまったような気がする。
この映画を刑事サスペンスとしてみた場合、中盤までは非常に面白く観れた。主人公に敵対的な街の住人、少しずつ解明されていく人々の過去、次第に味方を失い追い詰められていく主人公…。しかし、真犯人に至るまでの過程がなんだかよくわからなかった。殺人の物的証拠を見つけるとか、アリバイを暴くとか、そういうわかりやすいのがなかったからかも。
また、凝った構成になってるのはいいんだけど、昔の事件と今の事件は結局関係なかったってのが肩すかし。
最後に昔の事件の真犯人が分かる、という展開ならまだ意味があったかもしれないけど、終わりかたがよくわからなかった。主人公が最後に見つけたのは、殺されたガールフレンドが父親に虐待を受けていて、街を出ようとしていた、という証拠だと思うのだが、彼女が父親に殺された、という証拠ではない。
結局彼女は父親にどうかされたのか、それとも本当に単なる事故だったのか、映画の中ではぼかされている? なんか単なる虐待じゃなく性的虐待であることをほのめかす感じでもあったから、もしかしてカットされてるシーンがあるのかな?
あと、原題がThe Dry というところからも、干ばつがなんか事件に関係してるのか期待したのだけど、単に人々を苦しめてる、という以上のものを見いだせなかった。
昔の水を満々とたたえた川と、干上がった川のあとが交互に出てくるシーンが印象的なので、何か仕かけがあるんだろうなー、と思ってしまったが、そんなことはなかった。
たとえば、当時は水があったために見つけられなかった殺人の証拠が、干上がった川の底から見つけることができた、とかだったら面白かったと思うのだが…。
未熟だったころの青春時代の苦い過去に対して、成熟した大人としてそれに向き合う覚悟を決め、過去と対決し、悲しい結末を迎えつつも、先に進む希望を得た一人の男の物語として見るのが正しいのかも。