「改善と改悪が同居する、再編集の功罪を抱えた新バージョン」ロッキーVSドラゴ ROCKY IV 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
改善と改悪が同居する、再編集の功罪を抱えた新バージョン
スタローンが『ロッキー4』を大幅に再編集。37年ぶりのディレクターズカットになるわけだが、ロッキーシリーズでも飛び抜けてライトな(そして良くも悪くもダサい)エンタメだった「4」を人間ドラマに昇華させようとした意図はわかる。アポロとの試合に望む直前のドラゴの姿など、『クリード2』に繋がるようなドラゴの人間味が感じられる場面も足されていて、なるほどと膝を打つ変更も多い。
ただ全体的には、もともとの軽さと、足そうとした重さがバッティングしているように思える箇所が多く、いじくりまわしたことで編集がうまくいってないように見えるのも残念。得られるものもあるが、一方でやはり一度完成した映画は(公開されて観客に観られることも含めて)固有の生命を得るのではないか。それを弄くるのはひとつのイキモノを切り貼りするような行為ではないかと、再編集の功罪を考えて複雑な気分にさせらる罪作りなバージョンだと思う。
コメントする