バビロン(1980)のレビュー・感想・評価
全1件を表示
緊張感の高いストーリーとサントラ
1970年代後期のイギリス、ブリクストンが舞台。
主人公ブルーは工場で働きながら、仲間とサウンドシステムを持ち、DJをしている。
ブルーたち(移民二世)を襲うのは、白人たち(ナショナルフロント(NF)など)からの差別言辞と、信じ難いような悪法「サス法」を濫用した警察による不当逮捕。これらには、心底から胸糞が悪くなる。
そして同居する家族の言葉からは構造的かつ相続的貧困が示される一方で、パーティや教会といった、一世二世のコミュニティカルチャーも描かれる。
登場人物のの会話は単語すら、ほぼ聴き取れない独特なもので、それにベースとダブを強調した音楽が重なっていき、クライマックスのDJバトルへ。
主人公ブルーを演じたブリンズリー・フォードは、ブリティッシュ・レゲエ・バンド「アスワド」のヴォーカル&ギター。アスワドは1984年に後楽園ホールで見たが、途轍もなくエネルギッシュなライブだったし、ダブをライブで演奏するのを初めて見たので、びっくりしたものだ。なお、映画には出演していないが、アスワドの名ドラマー、ドラミー・ゼブは今年亡くなってしまった。
サウンドトラックはデニス・ボーヴェル。
ヒリヒリしたストーリーが、いつも曇っている(または雨)空の下で、ベース音の強い音楽と共に語られる。
カタルシスや救いは殆ど無いが、もう一度観たい、とすぐに思った。
見終えて「もしも」と感じたこと。
この映画は1980年作品なので、42年経っての日本公開となったのだが、「もしも」1980年から程なく公開されていたら、自分でもPAやミキサーを持って、サウンドシステムを演ったろうな、と思った。
2022.12.23. 東京・墨田区「stranger」で鑑賞。
全1件を表示