「愛とはどういうことか」エゴイスト enmasamaさんの映画レビュー(感想・評価)
愛とはどういうことか
特に前置きもなく観始めた映画。
BLの世界はよく知らないが、出会いが少ない分、互いに執着してしまうのだろうか。
性描写はなかなか踏み込んだ映像で、役者さんはすごいなと思った。
浩輔は、龍太が母親の為に頑張っていることを知ると毎月の援助を出す。その代償として身体を売ることやトレーナーも辞めさせ、不足分を地道な労働で補わせる。
愛しているから何かやってあげたい。自分の気持ちをわかってほしい。そのために惜しみない援助をする。でもそれは一方的な表れでもあり、毎月お金を受け取っていくたびに龍太は対等な気持ちでいられなくなる。
龍太がとてもピュアな人で、浩輔の愛の縛りに応えようとする。
心の中では体がしんどい、労働がきつい、でも母親に仕事の内容を胸を張って言えるようになったと、無理矢理納得していたのではなかろうか。
浩輔は龍太が食事もそこそこに寝落ちしてしまうほど疲れているのに、仕事の内容を知ろうともしない。どれだけ大変なのか、心配したり疲労への気遣いさえない。
どんなに龍太が疲れていようが「龍太の状況」を気遣うことなく「自分の思い描いた現状」に満足して、荒れた手にクリームを塗る。こっそりクリームを塗る行為は理想の愛の形だとでも言うように。
浩輔の利己的な愛がとてもよく表れていた場面だと思う。
相手の立場にたって考えるのではなく、自分がどれだけ相手にしてあげているかに重きを置く満足感というところが、エゴイストの所以なのではないだろうか。
自分の気持ちを大切にして、形にしてそれを相手に表す。理想の形にコントロールしようとする。それらを押し付け、相手を変えようとするのも愛なのかもしれないが。
龍太亡き後は、龍太の母親の世話をする。龍太が過労死なのか、映画では死因をはっきり言わない。それはそこに目を向けない浩輔のエゴの愛が、どうして龍太が死んでしまったかの原因を考えようとしない表れなのであろう。
当初は龍太が大切にしていた母親だからと気にかけていたけれど、お金を差し出して「愛がわからない」と嘆く。その言葉に龍太の母親が気持ちを受け止めてお金を受諾すると、再び龍太と同じような道をたどる。浩輔は自分のしている「愛の在り方」に立ち止まって振り返ることをしない、気づいていたとしても蓋をしてしまう不器用さ。
愛とはなにか。エゴや自己満足と紙一重でもある。特に男尊女卑だと「養ってもらっているから相手の言うことに従う」とパワーバランスが生まれがちである。
相手の立場になってどうしたらいいのかと考えてやらないと、悲しい結果になってしまう。愛は「何かをしてあげる」などの一方通行ではいけないのだ。
相手を愛し思いやるということはどういうことかということを、考えさせられる映画だったと思う。BLという設定をすることで、愛は対等という立場をわかりやすくさせていた。