「丁寧に描かれた美しく危うい関係」エゴイスト ゆめさんの映画レビュー(感想・評価)
丁寧に描かれた美しく危うい関係
この作品のタイトルに「エゴイスト」を持ってくるかあ…!と観終わった後色々考えてしまった。
見方によっては浩輔の一方的な献身的ともいえる愛情。
龍太とその母に対し、金銭も時間も惜しみなく与える様子とその危うさを個人的には終始ハラハラしながら観ていた。
こういう関係は与える側も受け取る側も試されており、一歩間違えば精神の対等さがなくなって関係が破綻してしまう。
浩輔と中村親子がとても尊い関係を築いていたので、余計にその関係が壊れてしまわないかといらぬ心配をしてしまう私…。
結果的にそれは杞憂で、ちゃんと浩輔は、そこにエゴが入っていることを自覚していて、龍太もお母さんもそこを理解した上でちゃんと感謝しており、そこは本当に良かった。
心の拠り所だった母を思春期に亡くし、都会に出てからはファッションを鎧としてまとって生きてきた浩輔。
そんな彼が「エゴ」「愛がわからない」といいながらも、ちゃんと深く龍太とその母を愛していること、そうしてそうすることで浩輔自身も救わるストーリーになってるのが良かった。
何度も言うけど一方的な献身を伴う関係はとても危うい。そこをちゃんと自覚的に描いてくれる作品で良かった…。
浩輔さんが裏切られたら私たち(観客)はちょっと立ち直れない…。
あと印象的だったのは、本作はセリフやモノローグでほとんど語らないという点。その代わりに登場人物の表情にめちゃくちゃフォーカスする。
この映画の7割くらいは鈴木亮平さんの顔周りのショットを観ていたんじゃないかと錯覚するほど(実際錯覚でもないような気もするがどうなんだろ)。
静かに、丁寧に人物を描写する作品だなと思った。
しかし主演2人(鈴木亮平さんと宮沢氷魚くん)の色気はすさまじいな…。スクリーン越しに彼らの首筋から漂うフェロモンにあてられてしまった。
平日昼間ながら割と埋まってる劇場の観客が女性率9割だったのも面白い。
あと出番もセリフもはそこまで多くないのに柄本明さん(浩輔の父役)良かったなあ。静かで素朴ででも色んなものを包み込むような器のような役者さんだなあと改めて思う。
浩輔と2人で夕飯食べるシーンは泣きそうになってしまった。