「エゴイストとは」エゴイスト レントさんの映画レビュー(感想・評価)
エゴイストとは
思ってた以上に濡場シーンが多かった。だがこれはあえて作り手のカウンターだと受け止めた。特に今世間を賑わせてる同性愛の問題。国会は現在このネタで紛糾中だ。
男である私は女性に性的興奮は覚えるが、男性に対してそれはない。だが同性愛者の方を否定する気はもちろんない。
私が学生の頃、レズビアンカップルが後輩にいた。いつもイチャイチャしていて私には女子同士の戯れ程度にしか感じなかったし、全く嫌悪感もなかった。彼女らが同性愛だからといって誰が困るのか、あくまで個人の嗜好である。同じ嗜好でも喫煙の方が間接喫煙で他者に被害を及ぼす点で問題ではないか。
残念ながら今の日本は似非保守が支配する国。G7などと片腹痛い人権途上国である。そんな国では同性愛者たちは自由な恋愛も許されない。人がこの世に生まれて当然享受できるはずの幸せを公にすることもできない。
浩輔も龍太もごめんなさいを繰り返す。何故彼らが後ろめたさを感じなければならないのか。彼らに後ろめたさを感じさせる風潮は誰が作っているのか。
奇しくも現在の国会ではLGBT法案が審議されている。不祥事続きの政権の苦しまぎれによるものだが、保守による反対もいまだに根強い。
彼ら保守はいったい何が気に食わないのか、いったいLGBTの人達が何をしたというのか、彼らが社会に対して何らかの害悪をもたらすとでも思っているのか。彼らを否定する人間はただ自分たちの盲信する時代遅れの家制度などの価値観にとらわれて今ある現実を見ようともしないだけではないのか。彼らを否定すれば彼らが目の前から消えるとでも思っているのだろうか。それはただの現実逃避でしかない。
いま時代は過渡期に来ている。G7の中で同性婚やLGBTを認めてないのは日本だけである。このままでは国際的な孤立は避けられないだろう。
いずれは頭の硬い保守も認めざるを得ない。そう、時代は常に移り変わる。その時々の常識や価値観は時代とともに移り変わる。それについていけない化石どもは早々に退場いただくしかない。
すっかり映画レビューから逸れてしまった。本作は登場人物の心理描写を映像で表現する点において実に高レベルの作品。特に主人公の後頭部で表現される心理描写など秀逸。
「エゴイスト」という題名から作品後半は龍太への独占欲に駆られた浩輔が常軌を逸した行動をとる展開になるのかと思ったが、本作は観客の想像の一歩上をゆく展開を見せる。
龍太を失いたくない浩輔は経済支援までして彼の人生を変えてしまう。これは浩輔の利己的行動である。だが、結果的にそれは龍太の人生を救うこととなる。
若くして死んでしまうが、人生の絶頂で逝った龍太は幸せだったはず。浩輔の行為は結果的に相手を幸せにし、利他的行動とも言える。
龍太の母に対しても今まで通りの支援を申し込む。これは自分のわがままだと。出来なかった親孝行をしたいという彼の利己的行動だったが結果的に龍太の母を幸せにする利他的行動となる。
思えば愛し合うということは利己的でもあって利他的でもある。その両方を兼ね備えているといえる。利己的なのは片思いとか、一方的な思いの場合に限られる。
本作は前半で浩輔の龍太への愛を、後半で龍太の母への愛を同列に描いている。愛する対象や愛の種類は問題ではない。大切な人が誰であれ愛することの尊さを訴えている。
大切な人が同性だろうが異性だろうが関係ない。愛することの尊さに違いはないのだと本作は訴える。
いまのご時世、とてもタイムリーな作品でいつも行ってる映画館は満席状態だった。注目度の高さがうかがえる。
それにしても鈴木亮平の演技力にはうならされた。
コメントありがとうございます。
同性愛を気持ち悪い、と発言して更迭された議員がいましたものね。
誰にも迷惑をかけないのに、変化することを極端に恐れる国家。
進歩からどんどん取り残されてしまいますね。