「「アイヌ神謡集」を残し19才で夭折したアイヌの少女。その人生の軌跡が生き生きと、また力強さをもって伝わってくる作品です。アイヌを理解する上で是非一度ご鑑賞を。」カムイのうた もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
「アイヌ神謡集」を残し19才で夭折したアイヌの少女。その人生の軌跡が生き生きと、また力強さをもって伝わってくる作品です。アイヌを理解する上で是非一度ご鑑賞を。
「アイヌ神謡集」をこの世に残した知里幸恵。
その人生を描いたとのことで、注目してた作品です。最初
ドキュメンタリー作品かと思ったのですが、登場する人物
が実名ではないので、違っていたようです ・_・;
知里幸恵の人生を描いた本は何冊か読んでいるのですが
この作品の大筋はその人生をなぞったもので、話の展開も
概ね予想していた通りのものでした。 …なので
「和人からアイヌに対する差別・搾取・迫害の歴史」に
触れない訳は無いよなぁ と、覚悟しての鑑賞です。-_--;
鑑賞開始。 ああああ…
映像からの情報の量は、文章から得られる情報より膨大です。
なので、序盤のアイヌが虐げられている映像は辛かった…。*_*;
◆アイヌに対する差別用語・表現が作品中で使用されている
ことに驚きましたが、良く考えればこの作品の性格上必要
な事です。すぐに納得しました。
鑑賞終了 …ふぅ
さて、作品の内容に関して
主な登場人物(基本的にはモデルあり)
・北里テル(吉田美月喜) モデル:知里幸恵(アイヌ神謡集著者)
・兼田教授(加藤雅也) モデル:金田一京助(言語学者)
・イヌイェマツ(島田歌穂)モデル:金成マツ(知里幸恵の叔母)
・一三四(望月歩) モデル:不明(架空の人物か?)
北里テルと兼田教授を演じた役者さんの人選。
これが素晴らしかったと思います。登場した瞬間から、
” 知里幸恵 ” と ” 金田一博士 ” でした。
特に金田一博士の兼田教授を演じた加藤雅也(…ややこしい)が
私の頭にある金田一博士のイメージそのままに演じてくれたこと
がとても嬉しい。
アイヌの文化に敬意を持って接する姿には胸が熱くなります。
頭蓋骨を取り戻そうと奮戦する姿には力が入りました。
眼の前に博士がいたら、握手を求めるところです。(迷惑?)
実在の金田一博士は、アイヌ語研究の第一人者です。・_・ハイ
特に「口承文学」ユーカラの保存に力を注がれました。
金成マツの家を訪れた際に、知里幸恵と出会うのですが
・” ユーカラはアイヌの誇る文化です ” と熱く語る話
・知里幸恵が日本語もアイヌ語も話せると知り、ユーカラを貴方
の言葉で書き留めるよう薦める話
・そのためのノートを東京から送る話
・翻訳する上で、もっときめ細かな会話が必要となると、幸恵を
東京に呼び寄せる話
などなど。
これまで色々な本等を読んで、自分の頭に思い描いていた通りの
知里幸恵の人生がスクリーン上で描かれました。
19才の若さで心臓の病で亡くなることも、亡くなる前日にようやく
アイヌ神謡集の原稿が上がったことも、その通り描かれました。
まさに、知里幸恵の人生を描ききった作品かと思います。
見応え有りました。
覚悟を決めて観た作品でしたが、辛さだけが残る作品には
なっていなくて、良かった。
見逃さなくて良かった。
満足です。というよりは、やはり
” 観て良かった ” です。 ・_・ハイ
◇あれこれ
■「謡い」のリズム
ユーカラというのは「謡(うたい)」です。
言葉が音程とリズムを伴ってうたわれるもの。(のハズ)
ユーカラは文字になったことで、読むことができるように
なったのですが(これだけでも大変なことなのですが)、
音程やリズムがどんな感じなのかは今一つ不明瞭だったのですが
この作品で、音とリズムを伴った演奏がを聞くことが出来ました。
# 人びとが囲炉裏を囲むように座り、木の棒で炉端をたたいて
# リズムを刻む中、歌い手がリズムに乗ってユーカラを謡う
こんな感じだったのだ と分かり、個人的にはとても満足です。
■一三四青年
一つ疑問なのが、一三四の存在。
これまで読んだ本の中には、彼に相当する人物が出てきた記憶が無く、
実在の人物がモデルにいるのかどうか、分かりかねています。
もしかしたらこの作品オリジナルの登場人物なのでしょうか? はて?
ただ、この作品において一三四青年の役割は重要・必要なもので、
この作品のストーリー上欠かせない人物だったと思っています。
※と書いておきながら色々と調べていたら
どうもモデルになった青年がいるような感じが…・_・; キャー
■知里幸恵の叔母
知里幸恵が亡くなった後、彼女の遺志を継ぐように上京し
金田一博士の研究に協力、ユーカラの保存に尽力します。
金成マツが金田一博士のためにユーカラを書き残した、いわゆる
「金成マツノート」というものがあり、2006年までは翻訳作業が
続いていたのだそうです。
翻訳事業に予算がつかなくなり、活動が中断(中止では無いと
思いたい)したそうです。全82話のうち33話翻訳完了とか。
うーん。まだ半分も翻訳完了していない…。
◇最後に
心臓の病気で亡くなった知里幸恵。
心臓弁膜症(と言っていた気が)という病気は当時治療法が無く
安静にして生活するくらいしかなかった …ということ
なのでしょうね…。 しくしく。
現代医療なら手術すれば助かる病気かと思います。
そう考えると、なんか悔しい。
考えても仕方のない話とは分かってますが…。
それにしても
心臓に病気があると「結婚不可」と医者が判断する …って
そんな時代だったのか と驚きました。
作中、兼田先生が怒っていた場面が強く記憶に残ってます。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
返信ありがとうございました。
はい、この作品は観てないです。
が、たまたまもりのいぶきさんのレビューのトップに上がっていたのを読んで、とても心を動かされました。
上映館が近くにないので、観るのは厳しそうですが、本を読んでみようかと思います。
今晩は
とても参考になるレビュー、ありがとうございます。
私は学生時代に登山に嵌って居ましたが、北海道の山の名前はほぼ当時はアイヌ語で、代表格のトムラウシ山、カムイエクシツカウシ山とか、カムイワッカの湯(今でもあるのかな。滑川が温泉なんですよお・・。)歩かないと行けなかったですが・・。
今作や、大ヒットしている「ゴールデンカムイ」がもっとヒットして、和人にカムイの歴史を知って貰いたいですね。では。返信は不要ですよ。(実は年度末進行で可なり疲弊しています・・。)