劇場公開日 2023年1月27日

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「胸騒ぎがする母娘のハートフルムービーに感涙」あつい胸さわぎ たいよーさん。さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0胸騒ぎがする母娘のハートフルムービーに感涙

2024年3月26日
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鑑賞方法:映画館

噂では聞いていたけど、こんなに優しい映画だったとは…!乳がんになった娘を軸に、人間関係を包み込むハートフルな映画に心が揺さぶられる。人間味ってなんでこんなにも愛しいのだろうか。

元々名作名高い戯曲が原作。流暢な関西弁が重く受け止められそうな題材のクッションになっており、至って特別ではない家族の物語へと昇華させている。なぜなら皆、普通で完璧な人なんて居ないから。それを感じさせる配置。それぞれにキャラクターが醸し出す哀愁もあって、なんだか胸にジンとくる。

乳がんかもしれない…という所から母と娘の胸さわぎが始まる。それは恋にも似た、はたまた痛み、あるいは不安にも似ているのかもしれない。ウザかったり煩わしかったりしても、その距離がいかに有り難いのか…。それだけで胸のしこりは取れないけど、その距離感が与える安心ってやはり大切にしたいと思わせてくれる。それは自身の大抵の人間関係に繋がるものもあって。その配置と躍動が見事。受け入れて飛び越えることを決めた時、支えがいかに心強いのか。そして、その人がいかに大切か。気付かせてくれる。

主演は吉田美月喜さんと常盤貴子さん。吉田美月喜さんは近年ジワジワと活躍の幅を広げている若手女優。今作でも感じられる等身大の姿が一層重く、そして優しく作品の熱を伝えてくれる。また、常盤貴子さんのおせっかいで不器用な感じも凄くくすぐったくて良い。あと、佐藤緋美さんの演技も外せない。誰一人欠けてはいけない空気感も本作の見所だ。

そのしこりは、誰もが出来るもの。家族のこと、友達のこと、それぞれの半径に何が起きているか分からなくても、切っても切れないからこそ、その繋がりに甘えてもいい。きっと前を向けるから。

たいよーさん。