「看板に偽りあり。いい作品なんだからもったいない。」呪呪呪 死者をあやつるもの Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
看板に偽りあり。いい作品なんだからもったいない。
「呪呪呪/死者をあやつるもの」(原題:방법: 재차의/英題:The Cursed: Dead Man's Prey)。
まず「?」と思うのは、主人公ジニの元から消息を絶ったとされる謎の少女のオープニングエピソード。観続けるうちに「そっか。これ何かの続編なんだ」と気づく。
あとから調べてみると、韓国ドラマ『謗法~運命を変える方法〜』(2020年/全12話)から続いていることが分かる。
ワケの分からない邦題も誤解を誘因する。原題には”재차의”(再びの)がついている通り、ほんとうは『謗法〜again〜』が正式タイトルで、よくあるドラマの”劇場版”パターンだ。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』のヨン・サンホ監督が脚本を手がけたという話題性だけで劇場公開に足を運んだ観客は、圧倒的な情報不足のなか鑑賞せざるをえない。
動画配信サービスの一部でチェック可能らしいが、公式サイトはプロフィールには触れておらず、プロダクションノートを隅々まで読んで初めてドラマ版の存在が分かる。ズルい。
映画サイトにも書かれていない、本来のプロフィールは「漢字の名前、写真、所持品で人を呪うことができる特殊能力者の少女ソジンと、正義感溢れる記者ジニが大企業の裏に隠された悪に立ち向かうシリーズ」である。
劇場版のストーリーは、住宅街で起きた殺人事件。被害者の傍らに横たわっていた容疑者らしき死体は、なぜか死後3カ月が経過していた。死体が人を殺した?
一方、ジャーナリストのジニが出演するラジオに、犯人を名乗るリスナーから電話が掛かってくる。自分が死体を操って被害者を殺した犯人だと告白。そしてジニへの直接的な接触を要求してくる。真相に迫るジニと警察は、そこに製薬大手企業が隠している陰謀があることを知る。
能力者ソジンは行方不明のまま始まるので、設定の前置きが分からないままではあるものの、いちおう筋は通る。高速ゾンビの集団が出てくるのはヨン・サンホらしいと思ってしまったり、実にスリリングなアクションホラーに仕上がっているのも好印象。VFXがしっかりしているうえ、背景設定のリアリティもある。
独立した1本の映画としての魅力は確かにある。配給元がドラマ版を伏せて公開したワケにもうなずけなくもない。
とはいうもののドラマシリーズを観ていれば、もっと能力者ソジンへの理解を深めているから、違った印象になるはずだ。
エンドロールに2本のポストクレジットシーンがある。しかも“続編予告”もある。やっぱりドラマシリーズを見るしかないのだろうけど、ちゃんと配給元には正しい情報をフォローする責任を果たしてもらいたい。ねっ、ハピネットファントムさん。
(2023/2/11/ユナイテッドシネマ豊洲/Screen5/F-5/シネスコ/字幕:任秀彬)