「平凡な信長の「無念な人生」。」レジェンド&バタフライ ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
平凡な信長の「無念な人生」。
これは史実とは大きく異なる話なのだろうが、歴史ファンタジーとしてはよくできている。信長を戦国時代のスーパーヒーローとして、良い所も悪い所も少し大げさに描くのが今までの信長像だと思う。そんな期待又はイメージを持つと大きく裏切られる。この信長はなんと人間らしくて英雄らしくないことか。若き頃の「うつけ」ぶりから脱して戦を重ね、天下統一の野望を持ってからは「魔王」となって情け容赦なく敵を殺す。しかし天下統一が現実になりかけて平穏を望んだ時に光秀に討たれてしまう。ここにいるのは、見栄っ張りの普通の人間である。
信長と濃姫が強い絆で結ばれていて、表向きは反発しながらも終生愛し合っていたという見方は面白い。この映画はラブロマンスになっている。史実ではないだろうがそんな事があっても不思議ではない。濃姫は「国盗り」の道三の娘であり、その意思を受け継いでいる。信長と濃姫の間に同志的な絆があったかもしれない。そんな視点が新しいと言えば新しい。
正直な所、信長の非凡さも感じられないし、信長と濃姫の愛もピンとこない。どこにこの映画の魅力があるかと言えば、木村拓哉と綾瀬はるかの戦国人としてのリアルな演技であろう。大きな夢を追いかけて、捕まえる直前で失った無念さに満ちた人生のリアルさを体現できたのは、一つの成果である。
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