劇場公開日 2024年7月26日

「自由自在に飛ぶイマジネーション」劇場版モノノ怪 唐傘 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自由自在に飛ぶイマジネーション

2024年7月28日
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鑑賞方法:映画館

日本には、長い年月使い古された道具類に霊が宿り、人間にいたずらを仕掛ける妖怪、おばけになるという民間伝承がある。唐傘おばけは本来そういうもの。一方で、物の怪(モノノケ)は恨みを持つ死霊、生霊、幽霊の類であり、人に取り憑いて怨念を晴らそうとする。つまり別物。この物語はそのあたりをおそらくはわざとごっちゃにして話を膨らませている。映画内の章ごとというか、一日が終わるとき、ふすまが音を立てて閉められるでしょう。あのふすまに描かれているのが本来の愛らしい唐傘おばけです。でも薬売りが対峙する相手はそんな生易しい奴じゃない。
そもそも大奥に住まう主人が将軍ではなく天子様となっている。大奥内の装飾品も古今東西、ありとあらゆる意匠、デザインが散りばめられ、時空間を超えてゴージャスである。
エンドロールで、五輪塔のようなものの周りをくるくる回る映像が延々と流れるが、あれはゲーム空間を意識しているのでしょう。あの部分だけが三次元映像っぽいのです。
つまり、この作品は、先行するTVアニメも含め、民話、伝承、小説類、漫画、アニメ、ゲームといった中から「モノノ怪」を描くために使えるモチーフを片っ端から詰め込み、自由自在にイマジネーションを積み上げているのです。
その自由闊達さというかエンタメ意識の高さは買いです。次回は火鼠ですって。「かそ」と読みます。中国の妖怪です。どんな話になるんでしょうか、楽しみです。

あんちゃん