「考えさせられ、励まされた」オレの記念日 T Aさんの映画レビュー(感想・評価)
考えさせられ、励まされた
20歳で殺人犯として逮捕され、29年間を獄中で過ごした冤罪被害者・桜井さんを追ったドキュメンタリー映画。
重いテーマのように感じるが、桜井さんの明るい人柄のためか、むしろ軽快な雰囲気で話は進んでいく。
そして桜井さんのどこまでも前向きな生き方には、こちらが大いに励まされ、彼のような人間になりたい、自分も頑張らねばとさえ思わせてくれる。
現在、数多いる冤罪被害者の支援に桜井さんは精力的に活動されているが、こんな人間力の高い方に応援してもらえたら、冤罪被害者の方もどれだけ心強いだろう、と思った。
その一方で冤罪被害者だからこそ、説得力のある言葉が折々にはさまれている。
逮捕した時点で犯人と決めつける捜査手法、絶対に過ちを認めない糞みたいなプライドの塊の検察。そして検察の主張を丸飲みするだけの裁判官。
日本人が知らない日本の深い闇がここにある。
あってはならない冤罪事件がこれだけ繰り返されても、それでもなお謝罪一つせず、反省など全くしない検察という組織には、ひたすら呆れる。
海外では当たり前の「取調べの席への弁護士の同席」、「検察が集めた全ての証拠を開示、即ち検察にも不利な証拠も開示させること」を認めれば、冤罪などゼロに等しくなるはずなのに、頑なに認めない日本の検察。
いま、桜井さんはステージ4の癌の宣告を受けているという。
しかし、桜井さん、あなたはまだ死んではいけない。
この国の腐りきった司法に変化を起こすため、何より今後、冤罪で人生をめちゃくちゃにされる人を出さないためにも、桜井さんの存在は欠かせない。
冤罪事件は多くの人にとって無関係な話だ。
しかし無関心でいたら、永遠に冤罪はなくならない。
1人でも多くの方がこの映画を観て、冤罪について考えて欲しいと思う。
そして、桜井さんの前向きな生き方に触れて、元気をもらってほしい。