映画レビュー
雰囲気だけに頼ったVシネマ
今の若い人には分からないだろうが昔から横浜野毛に実在したJAZZ喫茶の老舗ちぐさが舞台、秋吉敏子、渡辺貞夫、日野皓正さんらも横浜の米軍クラブで演奏するかたわら、「ちぐさ」に通って米国直輸入レコードでジャズを聴いて勉強したという。
企画・監督の市川徹さんは元TV神奈川のディレクター、2006年より地域密着映画に取り組み、「ご当地映画の巨匠」と評される人物なので納得。
探偵ものにしたのは、松田優作の探偵物語のロケ地としても横浜が度々登場したからでしょう。
チャンドラーの「長いお別れ」や「さらば愛しき人」、ポランスキーの「チャイナタウン」などノワール調の名作の探偵もの、ハードボイルドも一時代を築いたジャンルなのでおじさん世代のノスタルジーとして惹かれるのは解ります。
ただ、クラウド ファン ディング で資金 調達した低予算の映画、役者も地味だし見せ場も無く探偵物語に比べたら漂うチープさが難でしょう。北野たけしの「座頭市」や水谷豊の「TAP」などを担当した濱地正浩さんがフリーのジャーナリスト役で主人公を助けていました、タップはどうしたのかと思ったら、取ってつけたように路上でワンシーンだけ踊っていましたね。
音楽の使い方も個人的にはピント外れの感、タイトルのスワニーはガーシュインの名曲だがポップス調なので明るすぎますね、監督がご執心だからと言うことらしいが王道はブルースでしょう、クラブ歌手に唄わせるならクライミーアリバーとか奇妙な果実の方がノワールでしょう。
何より本が頂けません、探偵ものとしてのサスペンス感も希薄で殺人事件の謎解きもセリフで語るだけ、アクションシーンも中国人の爺さんに襲われるだけ、派手な銃撃戦など論外のようだ、、気だるいノワール調の雰囲気だけに頼った雑なVシネマでした。
市川徹さんがユーチューブのインタビューで語っていたが、元々スワニーが大好きで映画に使いたかったが著作権が切れたのでやっと念願がかなったそうだ。唄わせるならナオミ・グレースさんと決めていたそうだ、なんとご主人のイラストレーター松下進さんまでセットで出演。
脚本は危ない刑事シリーズなど横浜が舞台の作品を多く書いている柏原寛司さんに相談したらお弟子さんの阪上有紀子さんを紹介された、阪上さんに、お願いしたのは、スワニーとちぐさと探偵ものということ、事件のプロットはたまたま横浜でカジノが取り沙汰されていたのでそれを絡めましょうということで出来たそうです。良くも悪くも市川徹さんの好み、センスが合うか合わないかと言うことでしょうね・・。