ザ・メニューのレビュー・感想・評価
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老夫婦の妻
自分の夫といかがわしい関係を持った女を逃してやるなんて理知的だし、描かれていた部分だけ見るとこの作品では1番素敵なかたですね。
彼女の様な人間が世界から1人でも居なくなるのはこのシェフの悲念こもった残念な最終作品が台無しになる事よりも余程損失だと想うので生きて欲しかったな。
タラと答えたのは、ちょっと…あれ?って感じでしたが。笑
夫との食事って、悪い意味でも良い意味でも、料理に集中出来ずともしょうがなかったりしますよね。わかります。
理知的で、かつ乙女なのだろう、彼女が好きです。
シェフに心酔する彼が料理へっぽこなのは意外でした。
初めての慣れないキッチンだったから…?
緊張し手が震えていたから…?
手際よく速く終わらせなければいけないと思ったから…??
なんか、もし初めての料理だったとしても、
いくら初めての料理と言えども、料理のいろはを知っている人間の料理ならばあんな結果に普通はならないのでは…?
それとも彼自身、片面のみブルー焼きしたお肉がお好きなんでしょうか。
にしてもただバターの塊をぶち込んでバターソースですってなる??料理番組欠かさず見ているのではなかったの?
エシャロットとネギを使うぞ!って構想出来た時点でワインやら入れようとは思わなかったのかしら…???謎です。
彼の件もだし、シェフ自身もだし、他の従業員も皆、優秀な才能(技術だけでなく、もちろん味覚や感性を含みます)を持つ希少な人間なのだろうから、死んで未来に色々なモノを産みだすことが無くなってしまったというのはとても残念な気がします。
最後に、シェフの最終作品に難癖をつけた彼女に対して、
きちんとそこは1流料理店のシェフらしく
『ひとりひとりのお客に対応し満足して帰っていただこう』と、
自身が練り渾身を施した最終作品(死)を下げ、別メニューを出して満足させた所、1流料理店のシェフのプライドを感じて良かったです。安心しました。
★が1あるのは、
シェフもまた、シェフという職業の熱心な信者であり、
こんな計画をするに至った自身のこれまでの経緯や悲しみなど関係ないと言わんばかりに、彼女に予定していたコースを提供する事をやめてまで別メニューを出す、
そういった、彼の常人とは確かに違うプライドをきちんと描いたことへの★評価です。
天才らしい所が観れました。
バーガーのシーンでのシェフの笑顔に
ただただどうしてこの様な悲しい結末になってしまったのかと残念に想い、その背景を知りたくなりました。
ただお客を楽しませたいだけだったのに…
離島にある有名なレストランの話。
一つ一つの演出やシーンをちゃんと覚えておくとより楽しめる作品だと思いました。
私は予告やあらすじから、実は人の肉を使ってる店なんだと先入観を持って見ていましたが、案の定転がされていた気がします。
お客はそれぞれに悪いバックボーンがあるお金持ち。
見終わった今は
シェフやスタッフ(家族と表現)それぞれが貧しい生活や金持ちに振り回された人生を歩んできたんだろうと感じ、
その復習(作品の中でいう執着)をメニューにしたんだなと感じました。
その表現方法がなかなか秀逸でした。
タイラーを味がわかる側だと絶頂にさせた後、
ウンチクをたれても作れない絶望(凡人)を味合わせ突き落とすことで自殺させるなど… ※個人的な憶測
なにを耳打ちしたのかはわかりませんが、人のあっけない弱さの表現だも感じました。
昔のスクラップ記事や写真のシーンから、
シェフはただお客を楽しませたいだけなのに、評論家やマスコミによって食を楽しむのではなく、評価するような人間ばかりに提供することとなり、人生にウンザリしていたんだと思いました。
なので、マーゴは場違いと言われ、食べたいものを食べるという姿勢がシェフ本来の求めていたもので、チーズバーガーだけは楽しそうに作ったんだと思う。
評価(評論)する側の人間を皮肉ったような作品に感じました。
サイコなシェフによる奇想天外な惨劇と現代の食への風刺によるダークコメディー
奪う側と与える側の逆転という現代の食のブームに対する痛烈な風刺がどうの…という鑑賞後に考察するべきものは一旦置いておいて、鑑賞中は「なんだか分からないけど凄みはあった」としかならない映画です。
文字通りの絶海の孤島で行われるサイコな復讐劇を、インパクトあるビジュアルと強弱練られたテンポでよく出来たジェットコースターのように観客を最後まで導きます。
ただ、レビュータイトルにもある通り本作はサイコスリラーだけでなくコメディーとしての側面も持ち合わせています。
分かりやすく笑わせてくることはないし、俳優陣が熱演しているため分かりづらいのですが、話の流れ的に「いやいや…」となる突っ込みどころは雑な脚本というわけではく、コメディーとして観る部分なのだと途中で気付きました。
スタッフがなぜそこまでシェフに妄信的になっているのか分からなかったし、落ち目の俳優やその付き人なんかは狙われた理由がとばっちりも良いところ。
最初こそ「えぇ…?」と疑問でしたが本作が現代への風刺と分かると「あ、ここは笑いどころなんだな」と感覚が変わりました。
実際自分は俳優と付き人が狙われる理由のところで笑っちゃいましたしね。最後のスモアもギャグでしかないでしょ。
説明不足な描写もあるのでゴリゴリのホラーやスリラーとして観ようと思うとちょっと肩透かしな部分もありますが、肩の力を抜いてめちゃくちゃシュールなダークコメディーとして楽しむと良いと思います。
グロは薄め
終盤ミッドサマーを彷彿とさせるシーンがあったが、客達が大人しく従っているのは洗脳されたからなのか?抵抗して抵抗してぐるぐる巻きに椅子に括り付けて欲しかったかな。
全体的に徐々にテンポよく分かりやすく謎が明かされていくので面白かったです。
アニャ様すごいな
いい役者さんを使ってるよね。
話は、そこまでスゴイかと言われると、冷静にツッコミ始めたら色々とツッコめそう。
そこを演技でもってっちゃうね。
その中でも主演のアニャ・テイラー=ジョイはすごい。
この人、出てるだけで映画が成立しそうだもんね。
謎の見せ方もうまかった。
「ん?」っとなってるところがだんだんと明らかになってく。
最後は、ほぼみんな死んじゃって、まあ理由があるからいいけど、あの役者さんは殺される理由があんまりだった。「月に一度の休みに観た映画が詰まらなかった」って。でも、気持ちは分かる。
気持ちは分かるけど、月に一度しか休みがないなら、映画はアタリ・ハズレの幅が大きいから、違うことをする方がいいね。
有名シェフの高級メニュー➕閉鎖空間サスペンス➕アニヤ・テイラー=ジョイ、レイフ・ファインズ が、より楽しめた
有名シェフ、ジュリアンと高級料理を食事に来た一般に上流階級ともいえる人達(落ち目の映画スター、犯罪者、料理評論家・・、そこにまぎれこんだ場違いのアニヤ・テイラー=ジョイ)の織りなす、狂気のシェフとサバイバルな死闘がはじまる。
映画は、人里離れた孤島に向かう小型船に乗り込むところから始まる。乗り込む上級客はジュリアンの食事メニューの始まりとともに一転、驚愕の恐怖に落とし込まれる。陸の孤島ともいえる逃げ場のない閉鎖空間➕レストラン。セレブ達の成り立ちや、助かるがための有様や行動が言語に現れてくる面白さ。何故、このような行動をジュリアンはとるのか?その目的と思考は?ジュリアンと食事に来た上流客の奇想天外な行動とジュリアンとの脱出対決。アガサ・クリスティのドラマや刑事、その他の探偵ものでは一同を前に解決役やヒーローなる者がいるものの、この作品は命あって脱出できるのか、はたまたジュリアンの計画通りの末路になるのかを見守る作品。
レイフ・ファインズとアニヤ・テイラー=ジョイの駆け引きの演技に魅了しました。
★Digital5.1CH鑑賞
★重低音 ─
★音圧 ─
★移動音 △
★分離度 ○
★サイド(左右、後、活躍度) △
★サラウンド △
グルメ映画とは思えないほど最高に不味そうで最高に旨い、人間という名のフルコース
太平洋の孤島になかなか予約の取れない一軒のレストランがある。
そのレストランの名前はホーソン。
有名シェフのジュリアン・スローヴィクが指揮を取っている幻の名店だ。
スローヴィクを崇拝する恋人のタイラーに連れられてこのレストランにやってきたマーゴ。
次々と運ばれる奇想天外な料理にご満悦のタイラーだったが、マーゴはいまいち気分が乗らなかった。
そして、メニューの内容はさらに過激さを増していき…
Yes Chef‼︎
耳を切り裂く柏手と異様な団結力の掛け声に圧倒される。
結論から言えばメインディッシュからお皿の端まで堪能できる非常に密度の濃い秀作なのだが、あまりに容赦ない皮肉のフルコース料理にどんな気持ちで観れば良いのか多少困惑してしまう。
「与える者」と「奪う者」がメインテーマの本作。
始めは得体が知れず気味の悪い「与える者」のホーソン側に嫌悪感を抱く。
「生態系をいただきましょう」と言って岩を出してきたり、「これは料理です」とパンのないパン皿を出してきたり。
食に対する美的感覚を押し付けてくるのが気持ち悪かったし、そういう映画だと思った。
もう、卵かけご飯とかが食べたいよ。
しかし、次第に皮肉の対象はここを訪れる客、つまり「奪う者」へと変わっていく。
美食家気取りのクズ男、レストラン常連の金持ち熟年夫婦、辛口料理評論家、落ち目の映画スター、成り金のIT長者。
こんな高級レストランに来れるのは、金が有り余っているような成功者ばかり。
そんな庶民の敵、食の敵ともいうべき者たちを名指しで断罪していくのは、成功者や金持ちに不満がある人ほど爽快だったかも知れない。
ただ、それだけで終わらないのがこの映画の素晴らしいところ。
あの場でどちら側にも含まれ、どちらにもつかなかったのはマーゴただ1人。
彼女はチーズバーガーを頼み、阿鼻叫喚のスモアが出来上がったホーソンを後ろに島を去る。
正しさを求める訳ではなく「ただ、食べた」彼女はあの悍ましい生態系から抜け出した1人の人間。
特に後半、マーゴを演じたアニャ・テイラー=ジョイがただただ無双していた。
彼女が出演していると観たくなるし、面白い。
今後も期待。
製作にアダム・マッケイの名前があって納得した。
対立するどちらにも非を持たせ、嫌と言うほど皮肉を込めながら、最高の大団円へと持っていく。
やっぱり私は自宅で下着姿のままかき込む卵かけご飯が1番好きです。
あるシェフの願望
有名シェフの開催するお店に集められた人々。
コースメニューの様に徐々に明かされるシェフの願望と客の絶望。そこに完璧を求めるシェフの料理にそぐわない人物が。
偶然にも連れて来られた女性を通して、一般とかけ離れた異様な空間と料理を前に起こる殺人の記録だが、観てるものにも異様な感覚を与えるのだが、行為(殺人)に向かうまでの具体的な理由がどこか他人的でスッキリしない。
またハラハラドキドキ感を感じられなかった。
現代のグルメな人達と個性的な発想のレストランを皮肉ったブラックユー...
現代のグルメな人達と個性的な発想のレストランを皮肉ったブラックユーモア映画。
客は味もろくにわからない奴がやれ芸術的だのやれ値段だのやれ詳しい解説だのとまさに現代のSNS時代の悪いところを誇張しており、
一方でレストランは客には伝わらないようなセンスと演出で客の1番の欲求である食欲は二の次となっているような状況。
いい皮肉っぷりで好き。
まさに驚愕のフルコース・サスペンス!!
アニヤ見たさに鑑賞。
彼女にはこういう映画がよく似合う。
世界一予約が取れない孤島の高級レストラン。
崇拝される伝説のカリスマシェフ。
参加した客たちの胸糞悪さも相まって料理は美味しそうに見えず。
食のためには金に糸目をつけない自称食通民への皮肉たっぷりの映画。
アニヤが頬張るチーズバーガーとフライドポテトがめっちゃ美味しそうだ!!
日本でいうとおにぎりと漬物かな?
食べる物には健康上気にかけてるけれど、贅沢なグルメ派が苦手なのである意味小気味よかったかも。。。
怖い怖い。
何事もほどほどに。
死ぬほど素敵な夜へようこそ
有名シェフのディナーに招待された癖のある客たち。それぞれが個性的に食事をすすめるなか、段々と狂気的なメニューが提供されていく。
繊細な料理を提供するような高級店の客層は様々。味もわからず女性相手のステータスに利用したり、虚栄心を満たす、箔をつける、知識の発散など、一度の食事に千ドル以上払えるような“庶民”ではない者たちが今回は招待される。
コース料理が進むにつれてその内容に文句をつけたりするものの、最終的には料理だと言われれば自身が焼かれることさえ受け入れてしまう。
サスペンスとは謳っているが、メッセージを踏まえるとブラックコメディが近いように感じる。
値段によってよく分からないままに料理の価値を決めることへの皮肉。
結局チーズバーガーが1番美味いよね。
身につまされる、、
ニューヨークから車で1時間程行った所に、
その周辺一帯が敷地で、
向かう途中からレストラン体験になるという店があると聞いた記憶を思い出しました。
そこがモデル?
私も美味しい物を食べる為、世界あちこちに出掛けていますが、確かにああいったレストランに皮肉満載なのは、一理あるかも、、
そこに行く事だけがステイタスで、お皿の内容覚えてない人居るかもなあ。
逆に気持ち悪い程、レストランに傾倒してオタクな人。
私はどっちでもないけど、パンの無いパン皿の風刺はね、確かに。
SAWの様にそこに囚われる理由が明確では無く、
何処にでも居そうなお金持ち達が犠牲になるのが、
途中迄のお皿は、いかにも有りそうな料理で
劇場型のレストランや分子ガストロノミーの店を思い出して、
なんかイロイロ突きつけれた気もしました。
あのチーズバーガーが高いのはなぜ
とにかく一番気になったのはチーズバーガーの価格。
あの肝心なシーンでチーズバーガーが9ドル50セント(セントの方に自信はない)もした時点でこの映画をすごいと思いながらも自分が入り込めない要因がよくわかった。
君の両親でも買える庶民的な味をって言って、ポテト付きのダブルチーズバーガーとはいえ9ドルオーバー? いくら日本と物価が違う、今は物価が高騰してると言っても、物価の高騰を示したかったら「君の両親でも買える庶民的な味」という表現でなく「君の両親が特別な日に買ってくれた」などとして、よりマーゴの貧困に寄り添う表現をすべきだったでしょう。色々考えは汲めなくはないですが、あのシーンは高級料理に対するカウンターとして置いているのだから、むしろ極端に安いくらいの方が、クーポンを使ってなどと言っても良いくらいのシーンだったと思います。映画のテーマに即すなら、このシーンでその値段は違和感しかない、そういった細部の雑さと言いますかブレと言いますかが、とにかく気になりました。というより、シェフをそういう「苦しみのあまり生まれたが、結局考えが雑な二項対立をする無茶苦茶モンスター」として読み取るにはシェフの思想の諸々の雑さは意図的なのかどうかがわかりづらくてモヤモヤする。
そもそもマーゴが片親かどうかも考えずに両親parentsと言うその無神経さもあのシェフのムカつくところです。(追記: そういえばマーゴが最初にシェフに話した作った身の上話のところで、シングルマザーでみたいなこと言ってた気がしましたが、それを思うと今の英語ではparentでない親の言い換えがたくさんあるはずですが、やはりあそこで両親って言葉をチョイスしたのはシェフの考えの至らなさの表現なんでしょうか? 複数形のsはヒアリングに自信がなくなってきたので、シェフは一人でものつもりでparentと言っていて日本語字幕がそこを汲まなかった可能性はなくもないですが)
演出や演技などは素晴らしい、圧巻です。
アイディアも面白い。
しかし大元のテーマに対して、そのシーンは必要あるか? なんなの? 考えが雑じゃない? というところが多々あり、終わった後時間が経てば経つほど演出などが素晴らしい分腹が立ってきました。思わず映画館の椅子でレビューを書き殴るほどに。
後何より、これを作った人たちの「食べること」自体への愛情が感じられなかった。まさにマーゴの言う通り「料理への愛」の問題です(別に料理に愛が必要とも自分は思わないですけど)。食べることが好きな身としてはそれも腹立たしい、シナリオを回す舞台装置としてしか食べることに向き合ってない感じさえする。
マーゴは良いキャラだとは思うんですが、作中で重要な要素ではあるとはいえ、レストランに来て初手からほぼ全く口をつけないのは……なんか普通に他者の食文化の尊重ができてないじゃないかとなって最後の料理についての切り返しがちょっと響かなくなるんですよね。チーズバーガーも高級料理も、(その背景に不均衡はあれど)等しく料理であることに変わりはないので。
特に突っかかったのが件のチーズバーガー周りと、役者とマネージャー?(あのポジションの方の正確な職業名を知らない浅学で申し訳ないですが)周り。
あのボンクラ役者が今回のディナーに呼ばれたのはいくらボンクラとはいえ正直ただ可哀想。志がないだの言われてましたけど、その後の項垂れ方を見ると当人だって色んな悩みがあるのが窺えます。あの一組だけ無茶苦茶な理由で呼ばれていたのは、シェフだって自分の職業でない人間には無茶苦茶な要求をする(悪い客になる)し、このシェフは狂ったモンスターであって、だからこそシェフの言ってること全部が全部「もっともだ!」などと言わないようにね、という製作陣の目配せなのかなと思うんです。
しかしこの後の「大学は? 学費ローン?」のあたりが、これブラックジョークとしては正直かなりクスッときたんですが、しかしテーマに対して考えるといやだからその「貧困な奉仕者vs裕福な被奉仕者」みたいな二項対立が雑なんだよな、となる。マーゴやシェフ本人がその職業を始めた当初の楽しさや志を語るシーンがあるように、奉仕者になろうと思うのは貧困だけが理由ではない(もちろん不均衡な社会も背景にはあれど)わけで。この二項対立が、しかも「貧困な奉仕者はチーズバーガーなどのわかりやすい味を好み(それをよく覚えていて)、裕福な被奉仕者が賢しげに難解な味を好む(が、その内容は覚えていない)」みたいな無茶苦茶雑な二項対立につながってエンドになっていくんで、もうそれは色んな方向に失礼でしょう、と思う。色んなバックボーンの人間が、色んな背景のもとで色んな人生の中で色んな味を好むんです。チーズバーガーだけならともかく、スモアの時に「わかりやすい味を好む貧困層」みたいな雑に処理してるなと確信した。いや、言いたいことはわからなくはないですし、そういう訴え(貧困と文化資本の問題とか)をすること自体には賛意を示せるんですが、しかし雑だし、なにぶんシェフの演技が凄すぎてこの雑な二項対立に観客が呑まれそうになる演出で推し進めてそのまま終わるのがなんだかなあって感じ。
キング牧師のあの言葉を「白人男性」が引用して、みたいなのに不可避的に含まれるグロテスクさは意図的なんでしょう。キング牧師なの? とボンクラ役者が聞いたらそれに応えたのはヴェリク部下の成金黒人男性でしたしね。まぁそこで黒人男性にまず聞くボンクラ役者の、結局人種差別を他人事としてる感もエミー賞が云々のシーンから考えれば多分意図的。でもとにかく、そう言ったシェフの雑さと、それはそれとしてこの映画が訴えたいのであろう貧困や奉仕・接客業に取り巻く問題、それともっというと途中雑に出てきた男性優位を取り巻く問題が全部うまく噛み合ってないんですよ。というか、整理されていない。→しばらく考えましたが、ブラックジョーク全開! という感じの雰囲気ではなく、役者や演出が凄味があるタイプの方向で進んでいくので、これブラックジョークだとしてもどこからどこまでジョークなわけ? と困惑するのもこの整理されてないという印象の一因かもしれません。最初からブラックジョーク映画として観たらかなり印象が変わったかもしれない。でもシェフが訴えてる問題自体は真っ当なのでブラックジョークとして受け取るべきでないところもあるのがモヤモヤ……。
だって世の中の不均衡ってそんなに単純じゃないから難しいんじゃないですか。たくさん考えてたくさん頑張らないといけないんじゃないですか。
あのマネージャーの方だって学費ローンでなかったのせよ、他に問題や人生の苦しみがあったかもしれない、なかったかもしれない、他にも色んな不均衡に立ち止まることもあったかもしれない。そうした「貧しい奉仕者vs裕福な被奉仕者」という構図だけで拾いきれない、社会の不均衡の絡み合った複雑さを、あのシェフが女性部下に迫った(このあたり日本語字幕が不十分でしたね、あと何よりもうその一件だけでも本当にシェフへの気持ちが冷めまくるんだよな)話とかを差し込むだけで、本当に処理できてると思っているのか? そもそも男性優位のあたりに関してや女性関連の描き方は、作中でもトップクラスに雑だなと思います。そもそもボンクラ役者が関係のないマネージャーを連れてくるのも、タイラーがマーゴを連れてきたのも、ああいうタイプのクソ金持ち男が二人で来い(タイラーだけでなくボンクラ役者もおそらく言われたんでしょう)と言われたら、高確率で自身より立場の弱い女性を連れてくることなんて想像に難くないんですが、そうした不均衡やそうした人間を巻き込むことにそもそも考えが至らないシェフの「雑さ」ですよね。いやこれ本当にどこまで意図的なキャラクター造形だと受け取ればいいんですか?
不均衡の複雑さを描くには、描写が足りず、かと言ってシェフの意見一本で、食べることを巡る問題だけで推し進めるには、他の問題を盛り込もうと欲張りすぎている。結果、雑な印象で終わります。
しかし何にせよ一番の問題はその整理のいってなさよりも、やっぱり奉仕者(接客業)を取り巻く問題と、貧困の問題を、いくらそれらが地続きであろうと単純にイコールで結びつけてしまったことだと思います。テーマを考えるなら、最後はお手頃なチーズバーガーではなく、もっと直球に接客業としてのカウンターパンチみたいなものでマーゴが切り抜けて欲しかったなあ。(というか君の生業がわからないとでも? みたいな台詞人間の見た目から人生を過剰に想像してて嫌ですね)→追記: 最後マーゴが自分が小さい頃食べてたチーズバーガーは9ドルなんて高い値段じゃなかったみたいなこと言ったら自分がこの映画に抱えてたモヤモヤの大部分がスッキリするかもな、と思いました。とにかくシェフの思想的な雑さ・浅慮がどこまで意図的なのか最後までわかりづらく進むのが困惑の最大の要因だったので。自分は割と投げっぱなしブラックジョーク映画が好きなんですが、投げっぱなしブラックジョークって本当に難しいんだな〜と改めて思いました。
シーンとしては好きなシーンがたくさんあります。
最後燃えるレストランを観ながらチーズバーガー食べるシーン自体は美しいと思うし、くしゃくしゃの10ドル札はよかった。そのあとに金持ちたちが経費でなんだ言ったり、みんなクレジットカードだったりも秀逸なブラックジョークと思った。
あの夫婦の女性の方が、マーゴに「帰っていいのよ」といったモーションをしていたのも良かった。
面白さでいうと、女性のスーシェフに対して殺さないでと説得しようとしたら「私が最後死ぬって演出考えたんです!!!!」みたいに笑顔で返されたシーンはめちゃくちゃ面白くて声上げて笑いそうになりました。お土産のヴェリクの指ですも面白かった。ヴェリク周りは「奉仕者vs被奉仕者」という軸と合致してて素直に面白いシーンばかりでした。
全体的に演出はほぼずっと良かったです。
シナリオ自体もサスペンスとしてのクオリティを考えるならば、良かったと思います。本当にハラハラした。
タイラーお前知ってたのかよ!というのが最後にわかるところはすごく綺麗な回収だと思いました。あれは奉仕者をなんとも思ってないクソ金持ち雇用者描写としてすごかったですが、同時にやっぱり死ぬのわかってて来るタイラーの執着と崇拝怖いですし、あんな崇拝しといて撮るなと言われていてかつこれから死ぬのが分かっているのにパシャパシャ写真を撮るタイラーのキャラクターは非常に良い。それにしても、計画を破綻させたくなければ一人でも来ていいよというべきだったのでは。でもこれは、あの手のレストランって確かに二人以上でと言いがちで、そういう敷居がシェフを苦しめつつシェフもそこから逃れられてないみたいなことなんでしょうか。
ただタイラーが料理作るのは下手っぴでみたいなのを周りの人がガン見してる、みたいなのは批評家憎しが出てる居心地の悪いジョークに感じます。
出来もしないやつが好き勝手言いやがってという腹立ちはわからなくはないですし、むしろ今作の「奉仕者vs被奉仕者」という構図に最も乗っ取ったシーンではあります。でも、別に好きなものや語れるものを、何だったら偉そうに批評してるものを、自分ができるかどうかは別でいいんじゃないか自分は思います。同時に、自分ができる、からと言って、批評できるかどうかは別なわけで、それぞれ別の能力・楽しみなので……。あのシェフだって自分はおそらく演技できないだろうにボンクラ役者に好き勝手言うわけで、考えば考えるほどボンクラ役者に込められた予防線すごいですね。
全体的に色々良いにもかかかわらず、訴えたいメッセージを巡る雑さがのめり込めなくさせる、そんな映画でした。
食べるな、味わえ
正直、不足している部分は多い。
シェフをはじめ登場人物の背景は断片的な台詞のみ。
スタッフが従順な理由も明かされず、ダメ元で暴れる客がいないことも不自然。
動機もすべて「そんなことで!?」のレベル。
でも、本作の主題には必要ないことなのかもしれない。
美食や映画はもとより、芸術や娯楽を享受する者への痛烈な批判がそこにはあった。
もしかしたら、創り手のエゴに対するそれも一緒に。
声をひそめて会話する客に対し、シェフの大きな柏手や、スタッフによる軍隊さながらの「イェス、シェフ!」。
その対比が序盤から不穏さを煽り、中盤から一気に顕在化する。
時折差し込まれるシュールな笑いが、不気味さとおかしみを引き立てていて秀逸。
材料『マシュマロ、チョコレート、レストラン、シェフ、スタッフ、客』と表示されるデザートは、笑っていいのか。
中盤いきなり『逃走中』が始まったのにも笑ったけど。
タイラーは本当にフラレたのか、実は恋人を巻き込まないようにしたのではないか。
余白も多いので、色々と想像してしまいます。
いやぁ〜、面白かった!
シチュエーションホラー(?)のひとつなのかな。
映画を見ながら、なんとなく「そして誰もいなくなった」と「羊たちの沈黙」を思い出していた。
とにかくキャラクターが個性的で、いわゆる“キャラが立ってる”のに恐れ入る。シェフやスタッフ、クセの強い客に至るまで、みんな完全にアタマがイカれてる(誉め言葉)。
まず、あのアジア系の女性案内人がいいねぇ。有無を言わせないスーパー慇懃無礼さで冒頭からガツンとやられる。
「パンがないパン皿」でヤバさを感じつつ、次のスーシェフの衝撃の行動で一気に見ている方もクライマックスww
最後はどう締めくくるんだろう、と思いながら、ラストに至って初めてマトモな料理、それもチーズバーガーというジャンクフード。それをテイクアウトする事で脱出するヒロイン(でイイよね)。そしてみんなでスフレになってしまうエンディング。
こういうの、好きだなぁ。
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