「不完全なメニュー」ザ・メニュー SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
不完全なメニュー
これ絶対面白いやつ~♪、と予告編観てからわくわくで臨んだのだが、期待値が高すぎて、「思ってたのと違う…」となってしまった。
間違いなく世界観とかコンセプトは面白いのだが、ストーリーが舞台設定を活かしきれてないように思った。
シェフはフルコース料理のストーリーの完成に異常な執着を持っている、という設定だけど、実際の映画のコース料理にそこまでのストーリー性を感じなかったのが残念だった。
罪、貧富の差、社会の矛盾、男性の醜さなど、それぞれの料理のテーマは面白いのだけど、それがストーリーになっているわけではない。「最後に全員死ぬことでストーリーが完全になる」、というのはどういう理屈なのか、その謎が明かされるのを期待していたが、とくに理由(オチ)があるわけではなかった。
「シェフの家にどんな秘密があるのか?」というのも期待していたのだが、単にシェフの過去と無線装置があるだけだった。
たとえば、「セブン」みたいな展開だったら「すごく面白い!」と言い切れたと思う。「セブン」の犯人の計画で秀逸なのが、自分自身の「嫉妬」と、刑事の「怒り」も「人類の7つの大罪を罰する」という目的を完成させるストーリーの中に組み込んでいたことだ。
この映画でも、主人公が逃走することや、その逃走が失敗することなども、シェフの完成したいストーリーに不可欠な要素として組み込まれているのであれば面白かったのに。
根本的には、シェフや料理人たちがなぜこんな大それた大量殺人計画を実行しなければならなかったのか、とか、なぜお客たちはもっと本気で抵抗しないのか、といったことに十分納得がいかない、というところが大きいように思う。
シェフが料理に異常な執着をもっていて、料理人たちがある種の洗脳状態におかれていることは分かるのだけど、それだけだと説得力が…。
映画観てて、これって監督が普段思ってることなのかなあ…、などとも思った。映画をどんなにこだわってがんばってつくっても、ファスト映画とかで雑に消費される。「俺は金払ってる側だぞ」と無茶な要求をされる。分かってる風の映画オタクに分かってる風な評論をされる。消費者の低レベルさ、傲慢さが糾弾されてる感じ。
最後のオチは良かった。シェフの料理へのこだわりを逆手にとった逆転。見事な短編小説みたい。昔話的でもあるかな。