「【美食を求めて集った選ばれし裕福な人々に、天才シェフが振舞ったメニュー。人はいつから美食に耽溺する生き物に成り下がったのか。今作は美食を追求する愚かしき人々の姿を、強烈に痛罵した映画である。】」ザ・メニュー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【美食を求めて集った選ばれし裕福な人々に、天才シェフが振舞ったメニュー。人はいつから美食に耽溺する生き物に成り下がったのか。今作は美食を追求する愚かしき人々の姿を、強烈に痛罵した映画である。】
ー 19世紀の、サヴァランの著書「美味礼賛」が発行されたころから、人は美食を追求するようになった。但し、それは貴族など極、限られた人たちであった。
今作は、昨今の美食を求める人々の姿をブラックダークに揶揄、痛罵した映画だと思う。
ミシュランガイド、食べログの評価に振り回される人々と、世間の評価を気にしながら、必死に美食を提供しようとする店。
一方では、食の廃棄、餓えに苦しむ国もある。
今の世界は、オカシイのではないかという制作陣の声が聞こえてきそうである。-
■天才シェフ、スローヴィク(レイフ・ファインズ)の店、「ホーソン」に集った人々。
1.美食家を気取るタイラー(ニコラス・ホルト)とその”恋人”マーゴ(アニャ・テイラー=ジョイ)
2.リッチな熟年夫婦。11回も「ホーソン」を訪れながら、スローヴィクから、”以前何を食べましたか”と問われても答えられない。メニューが進む途中で夫の浮気も発覚する。
ー 典型的な、似非美食家である。夫婦の表情は入店時から暗い。-
3.落ち目の映画スター(ジョン・レグイアモ)と、愛人アシスタント。
ー 愛人のアシスタントと、店で揉める映画スター。味覚は大したことが無い。-
4.不正により大金を獲得した、IT長者トリオ。
ー 彼らも、”「ホーソン」で食事をした”というステイタスを求めるためだけに店に来ている。-
5.スローヴィクの才能を見出した、女性料理評論家と編集者。
ー メニューの途中で、女性評論家に”これでもか!”と供される大量の料理。
私は、料理評論家と言われる人が嫌いである。”自分で作ってみろ!”-
◆感想
・絶対的権力を持つと思われる、天才シェフ、スローヴィクとシェフたちの”あと、5分で作れ!”と言う指示に対し、”イエス!シェフ!”と一糸乱れずに答える姿が、異様である。
給仕長のエルサ(ホン・チャウ)の、笑顔一つ見せずにスローヴィクの指示に従う姿も。
ー 洗脳ですか?と思ってしまった程である。少し笑えるが、異様な風景には変わりはない。-
・牡蠣のアペタイザーから始まり、料理は進む。
だが、マーゴのみが、”牡蠣はそのまま食べたいわ”と言ったり、率直な感想を述べる。
一方、タイラーは禁止されている料理の写真を撮って、燥いでいる。
ー 序盤でのマーゴの言葉と、スローヴィクの”貴方はここに相応しくない・・。”と言う言葉の意味。
マーゴは、実は娼婦で貧しい育ちをしてきた事が、さり気無く、会話の中に盛り込まれている。
この会話が、後半に効いてくる。巧い演出である。-
・三皿目にメニューについて来た、トルティーヤに客たちが行って来た悪事がプリントされている事を客たちが知るシーン。
ー IT長者トリオの不正や、リッチな熟年夫婦の夫の浮気が明らかになり、店に漂う不穏さは増して行く。-
■驚きの四皿目。スーシェフのジェレミーが作った料理が供されるが、スローヴィクはジェレミーの料理のセンスがない事を皆の前で彼に認めさせ、ジェレミーは口中に銃口の先を向け、自殺するシーン。
ここは、驚いたなあ・・。そんな中、独り、料理を美味そうに食べるタイラーの姿がブラックである。
・五皿目では、リッチな熟年夫婦の夫の指が切り落とされる。
ー ココにきて、このレストランで行われている事は、スローヴィクが美食を求めて集った選ばれし愚かしき客を罰する場である事が、明確になる。-
■スローヴィクがタイラーを厨房に呼び、”何か作れ!”と命令し、出来た羊肉のバター炒めの味を皆の前で酷評する。
そして、タイラーの耳元で何かを囁く・・。動揺した彼は、厨房を出て首を吊る・・。
ー 生半可な食通気取りの男タイラーを罵倒するスローヴィクの姿には、共感する。-
<マーゴを自分の部屋に呼び出した、スローヴィクに対し、マーゴは”全然、満足できない”と言い放ち、昔食べた味の、チーズバーガーをオーダーする。
スローヴィクは、その要求を呑み、彼女にチーズバーガーを作り、”彼女だけ”店から解放する。
その後、彼は店全体を綺麗にデザートとして彩り、自ら店に火を放つ。
舟の上から、その光景をチーズバーガーを頬張りながら、見るマーゴの表情が印象的である。
今作は、現代の美食を追求する選ばれし人々の姿を痛烈に揶揄、痛罵、批判した、ブラックダークな、美食映画なのである。>
NOBUさんのレビューを読んで、本作をじっくり振り返ることができました!ほんと、NOBUさんのおっしゃる通り。美食家気取りの人たちを批判したこういう作品大好きです 笑😆
NOBUさん、共感&コメントありがとうございます。
NOBUさんのコメントや他の方のレビューを読み、本作のテーマが少しずつわかってきました。アマプラで配信されたら、シェフの意図を理解した上でもう一度観てみようと思います。
こんばんは。
ご意見ありがとうございます。レビューの美食家という言葉を自称美食家に変更しました。純粋に食を楽しむより、自分がそういったステータスを持つ人間だと周囲にアピールするのが目的の人を指したかったので。
いつも返信不要などお気遣いありがとうございます🙇♂️