「この映画のリズムに最後まで乗れなかった。」カラオケ行こ! レントさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画のリズムに最後まで乗れなかった。
綾野剛は今公開中の「でっちあげ」も「まる」も素晴らしくて本作も評価が高かったので期待して鑑賞。
でも終始音程がずれてる曲を聞かされてるかのような、自分とはリズムが合わず、すべてが空回りしていた。
まず、やくざの狂児と聡実の出会いに無理がありすぎる。歌が上手くなりたいのならカラオケ教室に通えばいいものをなんでわざわざ中学生に教えを乞うのか。
無理くりにヤクザと中学生との関係を作ろうとしてるから、まず発端となる出会いからして違和感がありすぎて物語に入り込めない。
平凡な日常から未知の危険な世界に迷い込んでしまったかのような不安やら恐怖が聡実を演じた役者さんから感じられなかった。この辺もコメディということで深く掘り下げられなかったのか。
漫画原作なのでリアリティ求めても仕方ないのかもしれない。そもそもがありえない作り話なんだから。でも作り話だからこそ観客を作品に入り込ませるための噓をうまくついてほしい。何の違和感もなくこの作り話の世界に入り込めるような噓をでっち上げることこそが作り手には求められてるのだと思う。
最初の出会いも無理があるし、その後聡実が狂児と付き合い続ける理由もよくわからない。ただ怖くて否応なくならわかるが、途中で自主的に聡実が狂児に協力を申し出る場面がある。しかし、そこに何か聡実の中で心境の変化らしきものがあったようには描かれていない。
本作は声変わりを迎えた思春期の少年が自分の住む世界とは全く別の世界の大人と出会い、通過儀礼を経ることで大人になってゆく様を描いたジュブナイルものだと思うけど、聡実の狂児への思いの変化が読み取ることが出来ず、ただ段取り的に聡実が狂児を慕うような形に持っていかれても、見てるこちらはついていけず置いてきぼりを食らう。
狂児と行動を共にしたことで彼に感化されてヤクザたちの前で感情のままに威勢よく大声出せるようになったのも、彼の成長のあかしとして作り手は見せようとしてるんだろうけど、見てるこちらは彼の成長についていけてないから、正直あの場面も寒かった。
作品全体を通して聡実と狂児の二人の間に何か絆のようなものが芽生えたようにも感じられなかったし、だからこそラストにつながる聡実と狂児との出会いはすべてが幻だったのかという儚さを感じさせるラストも全然生きていなかった。
あらためて「セーラー服と機関銃」は名作だったと感じさせられた。