劇場公開日 2024年1月12日

「記憶の中のあんたは、俺の心の中でひかってるで。ピカピカや。」カラオケ行こ! 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0記憶の中のあんたは、俺の心の中でひかってるで。ピカピカや。

2024年1月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

綾野剛の狂児と新人斉藤潤の聡実の関係性がめちゃくちゃいい。狂児は、子どもだからって見下すことなく、対等以上に教えを乞う身として礼を尽くす。聡実は、相手がヤクザだからとビビることなく、自分の判断で物事の良し悪しを判断できる。
ヤクザの一家が強面でベタベタの演技をするかと思えば、中学生たちはあっけらかんと瑞々しい演技をする。その対比がいい。そんな別々の世界に住む二人がどうしてこうも接近できるかというと、二人とも、相手の長所をしっかりリスペクトできる人だからだろうな。そしてお互い、自分の立ち位置もしっかり理解している。聡実は、変声期であることの弊害を言い訳にすることなく、受け入れている。黙っているせいで部員たちが怒るのも無理はないが、部活のその場にいない、それくらいがようやく彼ができる精一杯。中学生だものな、それだけでもエライよ。狂児は、自分が世間のはみ出し者だということを理解したうえで聡実と付き合っている。「綺麗なもんしかあかんかったら、この街ごと全滅や」は名セリフだ。そして引き際もいい。その二人にとって、カラオケ大会までの日々は、ピカピカの思い出になったろうな。だって、狂児の・・いや、そのことは語らずにいて、エンドロールの後のボーナスシーンをお楽しみとだけ言っておこう。

栗太郎