劇場公開日 2022年11月4日

「今度はビターな味、大人の恋も煩わせる今泉力哉監督作品」窓辺にて たいよーさん。さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5今度はビターな味、大人の恋も煩わせる今泉力哉監督作品

2023年1月24日
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鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

知的

と言っても、大人は大人である。上映前後に今泉力哉監督が劇場ロビーで挨拶している時にちょうど足を運べた。ちょっとビターで、苦味のする作品。

「私も31ぐらいの時に結婚して、40/50くらいがターゲットになるかなと」正直な、嘘を付けない私の感想に真摯に答えてくださった今泉監督。結婚していて満足しているものの、妻の浮気にショックを受けないことにショックを受ける男の、全然パーフェクトじゃない物語。大人っぽさを纏わせながら、やや重いトーンの中で作品の会話が巡る。優しく、心地よく、刺々しく。

雰囲気は好き。ただ、自分の経験値が足りない。もう少し距離が近くなったら仲良くなれそうな気がする。夫婦にしかわからない空気、大人でしか味わえない痛み、そんなものを感じたり、振りまいたりしながら彼らは考える。陽が差し込んで、影の模様を楽しむように。

言葉をフラッと使いつつ、愛を契約している彼らに何が足りなかったのか、何を求めているのかを弄る。一緒にいる2人なら見えているものが見えていない部分は何か…。気持ち悪いような感情でも、それが自分の抱いたものであり、理解に及ばなくとも、感情に偽りがない。まだ自分には難しいが、もう少し大人になれば見えそうだ。

主演は稲垣吾郎さん。落ち着いた雰囲気の中に何処かソワソワした役どころが印象的。自身を省みながら取れないバランスを模索する辺りが繊細。また、本作は可愛いというより綺麗な顔立ちの女優さんが多い。中村ゆりさんに玉城ティナさん、穂志もえかさんと、まさにヒロインに相応しいキャストたち。一方で志田未来さんや若葉竜也さんといった実力派が固めているのも魅力的だ。

また数十年したら見方が変わってるかもしれないですね、その頃はこの作品がどうなってるか分からないですけど。監督は優しく微笑みながら、一端の大学生の私に言葉を寄せてくれた。境遇が変われば見方が変わる、そんな可能性を持っているのも映画の魅力と言えよう。もう少し大人になれること、楽しみにしてみる。

たいよーさん。