「干渉」窓辺にて U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
干渉
長かった…よく最後まで観れたと思う。
なのだが、退屈だったわけじゃない。
面白かったは的確ではなく、興味深かった。
稲垣氏ありきの脚本なのかと思う。
他に該当する役者が思い浮かばず、こんな才能もあったのかと興味深い。存在感がないという存在感。
書いてる自分自身も「?」って感じなのだけど、なんかそんな感じだ。
作品を観ながら終始頭に浮かんでたのは、浮遊する円だった。ともすれば人が人と知り合いになるまでを描いていたような気にもなる。
フワフワと漂う個が、ふとした事で接触し、離れまた接触し、互いに侵食していく。
広くなったり結びついたりはしない、変わらずユラユラと漂うのだけれど、中心は変わらずに円の輪郭だけが増えていくようなイメージ。
皆様、おっかなびっくり探り合う。
つついて見て、反応を確かめて、またつついてみたり…空間に滲んでく波長みたいなものが見えてた。
実に興味深い撮り方だった。
それなりにセンセーショナルな話が散りばめられてたりはするのだけれど、それは143分という尺を持たせる為で、要はそれではなくて、この波長なのかと思う。
この波長が生まれる過程を認識させるのに、それだけの時間が必要なのだろう。
ほぼカットを割られる事はなく、ひき絵の長回し。1日1シーンのスケジュールだったとしても疑問には思わないだろう。
なんせ演者に気負いがない。
監督はどんな手法を用いたのだろうか…興味が尽きない。落とす視線や、ふいに訪れる静寂や、うつむく顔や…感情にそぐわない仕草は一つとしてなく、感情を誇張する仕草もなかったように思う。
すっごく平坦な、いやわざと平坦なのだろうけど、ここまで波風立たないのに、俺が飽きてないのが不思議でしょうがない。
観終わって、即座に思ったのが、トイレの為に中座しなくて良かった、だった。
意外に台詞を通して登場人物たちの胸の内を想像してた143分なのかとも思う。
彼らの事を解ろうと試みていたのかも。
現実で出会う人物にそうしているかのように。
なぜこんな感想を抱くに至ったか、実に興味深い。
そしてタイトルについて考える。
「窓辺にて」
多分、監督がこの話を閃いた場所なんだな。
緩やかな日差しが差し込む窓辺で、つい哲学的な事に思いを馳せる時間ってあるじゃない?
絶対違うけど、なんかそんな事だ。
もしくは、窓辺から行き交う人を観察してる状況に酷似した作品だからかもしれない。
自分も含め、人間ってな興味深いなぁ。
たぶん、台詞というか言葉の裏側を想像するのかと思う。喋る行為には感情が伴い、なんらかの意図があってその言葉になる。
今、喋ったその言葉には、どんな意図が隠れているのか?そういう目には見えない波長を映像として撮ると、こういう事になるのかなと。
有意義な対話だった。