「【今作は鑑賞していて心理的にキツイ作品で突っ込み処も多い。が、主人公のアオイを演じた花瀬琴音さんのど根性演技に敬服した作品。今作は行政の社会的弱者保護政策に対し、強烈な怒りを叩きつけた作品でもある。】」遠いところ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【今作は鑑賞していて心理的にキツイ作品で突っ込み処も多い。が、主人公のアオイを演じた花瀬琴音さんのど根性演技に敬服した作品。今作は行政の社会的弱者保護政策に対し、強烈な怒りを叩きつけた作品でもある。】
ー 今作の序盤でアオイ(花瀬琴音)が働くキャバクラにで呑みに来たヤマトンチューの若者二人が”沖縄って最高ジャン。移住しようかな。”等と言っているシーンがある。
一般的には沖縄と言えばリゾート地で、人々は優しく、食べ物は美味しいという所だろうが、実際には違う事は、知っている人は知っている。
非正規雇用の割合は約4割、完全失業率は全国ダントツである。県民所得も低い。
今作はそんな沖縄の負を描いている。
勿論、包含すると日本の抱える諸問題に言及している事は明らかである。-
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・レビュータイトルに上げたように、主人公のアオイを演じた映画初主演の花瀬琴音さんのど根性が凄い。正に体当たりの演技である。目力も凄いし、眼の演技も凄い。
ー 昨日、本日鑑賞した劇場で舞台挨拶をされたそうである。ガーン!。だって「高野豆腐店の春」を先に観たかったんだもん・・。-
・物語展開も観ていてキツイ。働かない(働いても、ダメダメ)男、マサヤ(佐久間祥朗)にアオイはキャバクラで稼いだ金を取られたり、激しく殴られたり・・。
ー 内心、物凄く憤慨しながら観賞。女性を殴る男など許し難い。しかもあんな状態まで。だが何で、アオイはあんな男と一緒に居るんだろう。幼いケンゴの為だろうか。もしかしたら、マサヤも幼い時の境遇はアオイと同様だったのだろうか。-
・キャバクラに警察の捜査が入って、未成年のアオイは働けなくなり、家賃も払えずマサヤの実家に転がり込むシーンも、あの父親にしてあの息子ありである。
ー 矢張り、マサヤとアオイは共依存だったのかな・・。-
・居なくなったマサヤが酒場で喧嘩して、示談金一人30万円×3人を弁護士から提示され、更に窮地に追い込まれるアオイ。
ー で、到頭身体を売る事を決意。全て、児童相談所に一時隔離された息子ケンゴの為であろう。もしかしたら、マサヤのためか?そんな筈はなかろう。-
・更にアオイが唯一頼りにしていたミオが、飛び降り自殺してしまう。
ー ミオの葬儀のシーンと、その後、アオイが愚かしき海音の”知り合い”の男を殴り倒すシーンの花瀬琴音さんの演技は凄かった。
が、ミオが自殺した理由が良く分からない・・。ー
<ラストは、哀しい。保育園からケンゴを連れだしたアオイは、夜明けの海に漸く一緒になれたケンゴを強く抱きしめ、入って行くのである。
”逝っちゃ駄目だ!”と言う想いが込み上げる中、何処にも行き場が無くなったアオイは”ニライカナイ”にケンゴと行ったのだろうか。
今作は、行政には早急にセイフティネットワークの綻びを修繕し、社会的弱者保護にもっと力を入れて欲しいとも思った作品である。>
<2023年8月20日 刈谷日劇にて鑑賞>