「捕まるよ」愛してる! 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
捕まるよ
赤い!ヤバい!ミサ★ザ・キラー!!!
ドキュメンタリー映画の密着取材を受けている地下アイドルのミサは、ひょんなことからSMラウンジの女王様としてスカウトされる。
そこでミサは人気女王様のカノンと出会い、今まで味わったことのない快感から次第にSMの世界に目覚めていく。
SM嬢と地下アイドル。二足のわらじで成功を掴み始めたミサだったが…
モキュメンタリーホラーの名手白石晃士監督による、ロマンポルノナウプロジェクト第二弾。
途中まですっかり白石監督だということを忘れていた。
やっぱり「そんな密着絶対あり得ないだろ」という過激な映像がモキュメンタリー作品の醍醐味。
元プロレスラーのクセ強アイドルへの密着だったのが、次第に女王様になるミサの成長ドキュメンタリーへと変わっていく。
何の変哲もない(わけでもないけど)ドキュメンタリーだったはずが、高嶋政宏の登場やカノンの剃毛や放尿を境に空気感を変えていくのが面白い。
劇中、突然カノンが失踪する
そして突然、ミサの自宅に現れたと思ったらライバルのアイドルユメカを奴隷にしてやってきた。
目の前で2人のプレイが始まるというまさかのNTR展開。
さらには、あの事件が起き…
M側の気持ちを理解してこそ真の女王様になれる。
このようなハードなSMは自分の性癖の外側だったので、はじめはあまり理解できないかと思っていた。
しかし、プレイルームで行われること一つ一つに、次第に芸術のような整った美しさを感じるようになった。
己の中にしまい込んだ欲求を全て吐き出し、人前で自分の醜態を晒す。
人生経験としてかなり興味が湧いた。
予告でも出ていた高嶋政宏の逮捕。
正直これはギャグ程度で終わると思っていた。
しかし、彼の逮捕後の記者会見に、私がこの映画を「愛してる!」と思える全てが詰まっている。
両頬に変態という2文字の刺青を彫った高嶋政宏。
変態の何がいけないのかと必死に訴える彼の姿に不覚にもウルっときてしまった。
人に迷惑をかける変態はダメだが、変態であることには何の罪もない。
性に関してなんとなくタブー視されるこの世の中。
変態は悪口、下ネタはNGワード。
しかし、HENTAIは日本の文化だ。
顔にでかでかと変態を刻んだ高嶋政宏の目には一切の迷いはない。
そんな彼は今までで一番輝いて見えた。
武闘派のミサは正直セックスシンボルとは程遠いような存在。
だが、普段厚い殻を被っている分、それらが解放された瞬間のエロさといったら…
エロスとは解放なのかもしれない。
最後のライブシーン、舞台上の2人の神々しさ。
それを見て涙を流しながら感じるユメカ。
これが邦画の良さ、そしてロマンポルノの良さかもしれない。
エンディング。
「普通にしてみる?」と始まった2人の情事。
ずっと女王様だったカノンが一瞬だけ1人の女の子になる。
ギャップ萌えで気が気じゃないエンドロールだった。