「涙腺崩壊のクライマックス」愛する人に伝える言葉 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
涙腺崩壊のクライマックス
やや疲れの残る土曜の午前中、新宿ピカデリーに辿り着き「映画.com」の本作品へ「チェックイン」をしつつ「そう言えば、監督さんはどなたかな?」と確認。そもそもトレーラーも観ずに「ドヌーブの新作なのか」という認識しかないままだったので、正直本作品にそれほど大きな期待はしていませんでした。ところが、確認すると監督は『モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由(17)』『バハールの涙(19)』で印象に残る演技をしていたエマニュエル・ベルコ。彼女の監督作品は初鑑賞と言うこともあり、興味がグッとあがってきました。
とは言うものの、フランス語の映画を観ているとその言葉の抑揚に眠気に襲われることが多い私。それでも頑張って「主人公の背景や他の人物との関係性」を知るための前半を何とか乗り切りると、いよいよ興味が深まり集中力高まります。
またもう一つ、フランス映画への苦手意識は「激しい感情のぶつかり合い」。この作品も「ステージ4のすい臓癌で死期が近い息子と、その息子から子離れが出来ない母」他、そこら中に「感情の渦」で、案の定所々で大小様々のコリジョン発生です。ところが、劇中の人(達)だけでなく、観ている我々までも「確かな哲学」をもってなだめ、諭し、見事にカウンセリングしてくれる「本物で現役の医者」ガブリエル・サラが素晴らしい。
さらに、シーンの切り替えの巧さとシックリくる劇伴、そして各所に差し込まれる歌(音楽)が作品に深みと愛情を感じさせてくれます。そしてクライマックス、鑑賞者全員が感じる「これから起こること」を想像力を掻き立てる見せ方でカメラを回転させ、振り返るとそこにいる人、そして差し伸べあう手、からの『Nothing Compares 2 U』はもう涙腺崩壊です。
観終わってまだ、これを(あれと引き換えに)今年の暫定1位に更新するか悩んでいます。いやぁ、予想を超越して良かった。