劇場公開日 2022年7月30日

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「マッチに頼らざるを得ない、生/死。」アンデス、ふたりぼっち 消々さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0マッチに頼らざるを得ない、生/死。

2024年7月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

アンデスの山奥で二人暮らす老夫婦の日常。
途中「マッチが底をつく」ことを、妻がチクチクずっと嘆いていて、正直しつこいなと思っていた。
でも。マッチが無ければ、火をどうやって得るのか。火がなければ、どうやって煮炊きや暖を取ればいいのか。火は、食事や寒さをしのぐこと、つまり餓死や凍死しないことにつながる。火=マッチが生きるために無くてはならない物だと気づいた瞬間、そんな取るに足らないものに頼らざるを得ない二人の寄る辺なさが、痛切に迫ったてきた。
もしコミュニティがあれば、マッチが一時的に無くなっても、誰かに頼ることもできると思う。
けれど、彼らにはその「誰か」がいない。彼らは息子からも見放され、町からも遠い。社会から完全に忘れ去られた存在になっている。
これは彼らが辺境で暮らすからいけないのだろうか。
いや、社会は老齢や少数民族などを理由に、彼らの(ような)存在を無視しているのではないか、と問うているのではないか。しかも「マッチが無い」という、たったそれだけの表現で。
すごい、と思うと同時に、深く胸にグッサリ来た。

消々