「田中裕子」千夜、一夜 藤崎修次さんの映画レビュー(感想・評価)
田中裕子
この人は改めて言うまでもなく、名優。
この映画を見ただけでも、40年以上、第一線で活躍している理由が充分わかる。
声の張りはもののけ姫の頃と変わらないし、表情の機微でその時々の心象を微細に表現する力などは男女合わせても全ての俳優さんの中で一番じゃないかと思っている。
ただ、ストーリーはいまいちかな。
失踪人(いなくなってしまった人)をキーワードにしつつ、身寄りに急に先立たれたり、認知症で自分のことを忘れられてしまったり、いくら思いを寄せても応えてもらえなかったりと、自分の存在をないがしろにするかのように置いてきぼりを食らう人々の姿を重ねていくのはいいと思う。
ただ、そんな中に漂着した脱北者は必要なのか?
なんだか、あれで拍子抜けしてしまったし、設定を佐渡島にしたのも、北による拉致という政治的要素まで絡めて話を大きくしたほうが、文化庁の文化芸術振興費補助金を受けやすいだろうというソロバン勘定まで透けて見えてしまった、というと下衆の勘繰りが過ぎるか?
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