「村、それは全員が味方でない組織。」ヴィレッジ movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
村、それは全員が味方でない組織。
蓋をしても漏れ出す生息音シューシュー。
村全体コミュニケーション不足。
父親の業を背負い、母親の業を背負い、彼女の業を背負い、村の政治の裏を背負い、手を染めていく主人公。
横浜流星に暗鬱な顔をさせるなと村の一人一人に言いたい。
美咲も美咲。優は表沙汰に出たくないとわかっているはずなのに、わかっていなさ過ぎる。
父親の無念を繰り返し、再び村長に利用されて、散ってしまう優の人生。
あの村にいる限り、何も変わらないと貴重な若者に思わせるとしたら、その村は間違っていると思う。
そういう村の集合体が、日本を過疎化させ、豊かな農作物の土壌が汚染か外国人に買われる二途をたどり、国力を下げている。
一方で、閉塞感無力感を感じる若者がいたとしたら、その狭い世界の中だけで息をするのをやめて、全力で逃げてと言いたい。
横浜流星と奥平大兼が同じ事務所と知り、顔立ちの系統が似ているなと納得しかなかった。
ピンクの髪で突然現れた横浜流星と、マザーで突然現れた奥平大兼に売り出し方の共通点も感じる。
ひとつひとつの作品を、丁寧にストイックにこなしてきた横浜流星が積み上げて、先輩になっている事がとても嬉しい。
この作品も、内容的に、横浜流星が出ていなければ見なかったと思う。でも見た事で、村という組織文化で生息しなければならない若者の苦悩を考える時間になった。
身体中が癌なのに息絶えずにいる村長母ふみは、
村そのものを現す生き証人のようなものだろう。
本作の場合は、村長母が兄弟平等にではなく弟ばかり可愛がったがゆえ、長男の村長は歪んだ成果思考に陥りその息子に愛情をかけることもなく、村の貴重な若者達も自身の成果のために利用するためだけの使い捨て駒となってしまった。
伝統文化を持ち出し、能云々と絡めて、
100年50年の栄華も夢が醒めたら一瞬だと言い、
生い立ちの不利の上に成り立つ優くんの成功など一瞬で転落すると悟らせるより、
無条件の愛を与えられなかった大橋村長、長男透、優くんの愛の飢えが元凶でしょと思った。
大橋村長の弟は処理場建設を巡る10年前に思うところあり村を出て刑事をしている。能で繋がり昔から面識もある。
透の悪行を相談しても良かったし、透に襲われる美咲を助けにきて美咲が透を殺めてしまった経緯をすぐに相談する事もできたはず。
ピンチの時に人に頼ろうと思えない優くんを生み出してしまった村も両親も、背負わせすぎ。
子供を大切にしないと本当にこの国滅びるなと、本作を観ながら何度も思った。
地方に警鐘を鳴らす作品。前例に倣うなどの世襲の方法では変われない。