「臭い物には蓋をする」ヴィレッジ 加田瀬恋さんの映画レビュー(感想・評価)
臭い物には蓋をする
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生きるためには、“何か”を犠牲にし続ける必要がある。特に、この村の人々にとっては。
修作(古田新太)は、優(横浜流星)の父を犠牲にして、村にゴミの最終処分場を建設する計画を進める。建設の際にも、村の信仰や景観を犠牲にし、新たな雇用を生み出している。
また優の父も、自分を犠牲に家族を守ったが、その結果、優たちに今までの日常を犠牲にさせる運命を背負わせている。
そんな優は特に、好きだった薪能を犠牲に、父が残した借金を返済する日々を送っている。
数年ぶりに帰郷した美咲(黒木華)も、初めは全てをうまく回そうと努力していたが、透(一ノ瀬ワタル)との一件から、犠牲にする姿勢を取り戻す。かつて、自分が村での生活を犠牲に新たな生活を望んだように。
またこの姿勢は、美咲の弟である恵一(作間龍斗)にも受け継がれている。作中で唯一純粋であった恵一は、ゴミ処分場の問題を明らかにし、結果的に村の存在を危うくさせる。そこには“何か”を犠牲にする意志はなく、純粋な正義感によるものである。しかし、エンドクレジット後には、姉と同じく村を離れる選択をしており、本作で描かれた美咲の運命を辿ること、つまり犠牲にする姿勢が示唆されている。
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