「ボーイミーツボーイのその先へ」美しい彼 eternal SpicaMさんの映画レビュー(感想・評価)
ボーイミーツボーイのその先へ
人気BL小説を映像化したドラマシリーズ(2021・2023)の続編だが、冒頭にこれまでのあらすじが提示されるので、未見でも鑑賞できるようになっている。(が、ここに至るまでのあれやこれやが主人公二人各々の視点から描かれるのがエモさ満点の大きな見どころになっているので、できれば、先の劇場用ダイジェスト版を見ていない方は、配信で見られることをお勧めしたい。)
同居し深い関係を持つようになっても、平良の強烈なオタク目線が抜けないのでどこか歪な恋愛なのだが、清居の周囲で起きた事件をきっかけに平良が大きく成長する過程がドラマチックに描かれる。
前作から一年余り。変わらずギリシャ青年像のような主演のコンビからは「男女間の恋愛と同じスタンス」(本人達談)でそれぞれの役に素直にひたむきに向き合っているのが伝わってきた。萩原さんは安定の表現力を発揮しているし、八木さん演じる清居はしょっちゅう目に涙を溜めていて、監督は泣くのを止めるのが大変だったとのことだが、それくらい役になりきっている熱演。美しい男子の涙には強い訴求力がある。(私にはw)。彼の潤んだ目には何度も心が持っていかれた。
演出・脚本の、原作の美しい台詞を活かす一方、刺激の強いアダルトな部分をソフト目にかつラブリーに仕上げた匙加減が素晴らしく、小説作品には疎い昭和BBA(私w)にはとても嬉しかった(この劇場版でも十分ドキドキした笑) 。同じく、衣装とセットはお洒落で凝っていて、音楽もエモいし、他のキャスト陣もいい。テンポ感を大事にされたんだと思うが、欲を言えばもう少し長く観ていたかった。
二人だけで永遠の誓いをたてたあと手を繋いで駆け出す二人を見て、若いっていいな、一途っていいな、と作品中の野口ではないが、遠い日に忘れてきてしまったものを思い出してキュンとした。彼らも美しいが、青春も美しい。こんな素敵な作品が生まれるこの世界はまだまだ捨てたものではない。キャスト・製作陣の奇跡のようなハーモニーに乾杯!
物語中の二人だけではなく主演二人の今この時を切り取って収めたアルバムのような本作は「アナザーカントリー」「君の名前で僕を呼んで」と並んで私の大好きなBL映画の一つになった。
原作の三巻目はまだ読んでいないが、いつかまた同じキャスト、製作陣で紡がれた、その後の二人の物語を見てみたい気がしている。